日本のスポーツカーが今、将来に向けた岐路に立っている。 日本では広い世代でミニバンの需要が高く、2010年代以降はSUV人気も急上昇してきた。また、軽自動車はEVを含めて多様化が進んでいる状況。そうした中、スポーツカーはどのような形で存続するのか。日系自動車メーカーの日産自動車「Z」、マツダ「ロードスター」、トヨタ自動車「GR86」は今後どうなるのか。(ジャーナリスト 桃田健史)
海外市場の環境政策の軌道修正が
日本スポーツカーにも影響
自動車メーカー各社は今、次世代スポーツカーのあり方について思案している。
スポーツカーには定義はなく、一般的なイメージとしては2ドアのスポーティーなクルマで、日本車では日産「フェアレディZ」、マツダ「ロードスター」、そしてトヨタ「GR86」が代表例である。
そんなスポーツカーは大きな2つの課題に直面している。それは、電動化と消費者ニーズの変化だ。
電動化については、欧米や中国で2010年代後半頃からESG投資に関連した国や地域の環境政策によって電気自動車(EV)への転換の流れが生まれた。
ESG投資とは、これまでのような財務情報だけでなく、環境、社会性、企業統治(ガバナンス)を重要視した投資のこと。SDGs (国連総会で採択された「持続可能な開発目標」)とも深く関係する。
こうしたグローバルでの急激なEVシフトの風潮に対して、日本の自動車メーカーでつくる業界団体・日本自動車工業会では「敵は炭素」または「カーボンニュートラルへの道はさまざまある」といった表現を使い、国や地域の社会情勢に適応した多様な動力源を今後も継続的に生産・販売していく意向を示してきた。
そうした中、欧州連合は昨年前半、環境に関する欧州グリーン政策の中で、電動化に加えて既存の内燃機関にカーボンニュートラル燃料(CN燃料)を使うことも認めると、これまでの方針を一部変更した。
これにより、「スポーツカーの電動化構想」に変化が生じる可能性がある。