車に馴染みのない向き、中でもスポーツカーと親しみのない人でも、「知っている日本産のスポーツカーは?」という質問を投げかけられると、多くの人は「Z」と答えるのではないだろうか。フェアレディZ――言わずと知れた日産自動車のフラッグシップモデルだ。日本を代表するスポーツカーのひとつと言っても、過言ではないだろう。

 このZに、2022年、最新型となる「7代目 Z34型」が登場した。だが、世界的な半導体不足による部品調達の遅延から受注停止となった。そのため2024年5月現在でも、いまだ「欲しくても買えない」状態が続く。そのためかえってカーマニアたちの間で希少性が増し、さらにZの神格化を高める結果となっている。

若手作曲家のホープ、松尾賢志郎が
最新型フェアレディZに乗ってみた

「まるで淑女とステップを踏んでいるよう…」クルマ好きの若手作曲家を陶酔させた、最新フェアレディZの乗り心地【試乗記】松尾氏の愛車、マツダの名車「RX-7」。約20年前の車だがファンの間では今なお人気が高く入手が極めて困難だという

 そんなZに、ピアニストにして作曲家の松尾賢志郎が試乗を許された。音楽界の名門、国立音楽大学附属高校、同大学作曲科で学んだ松尾は、いまだ30歳に満たない若き音楽家である。

 1日1曲、毎日、音楽を作曲することで知られ、ときに音楽界では若手のホープといわれる松尾だが、私生活では車好きたちの間で「FD」で通っているマツダの名車「RX-7」を駆る生粋の車好きだ。その松尾がZのドライビングシートに座った。

「この車(Z)はスポーツカー以外の何者でもありません」

 いまだ興奮冷めやらずといった面持ちでZへの試乗を終えて開口一番、語ったのがこの言葉だった。日頃、スポーツカーというジャンルに分類されているRX-7を駆る松尾にして、この言である。いかにZという車のスポーツ性、パワーといったものが桁外れなものかが日頃、さほど車に馴染みのない向きでもわかるだろう。そんなZを操った松尾が音楽家らしく、こう言葉を継ぐ。

「エギゾーストサウンド(排気音)がパワフルです。でもエレガント。まさにフェアレディ――」