「バケット・リスト」と
スマイルの力

 それでは、残り人生でハッピーとエンジョイを実現するためにはどうすればいいか。僕がまずおすすめするのは、「バケット・リスト(Bucket List)」、死ぬまでにやり遂げたいことのリストを作成すること。

 趣味、旅行、家族でのイベント、仕事、なんでもいい。やりたいことの数は多ければ多いほど良いと思う。実現に向けての準備や計画、行動が楽しくなり、「余命何年」と落ち込んでいる暇はなくなるはずだ。

 実際、僕の友人に、奥様ががんで余命宣告された際、奥様のバケット・リストを作成し、当時務めていた外資系企業の社長を辞して、夫婦でリストの実現に取り組んだ人がいる。リストは見事コンプリート。そして、なんと奥様の余命は、当初宣告されたよりも長くなったそうだ。

 奥様の寿命が延びたのは、医療技術の進歩によるところが大きいとは思う。それに加え、リストのコンプリートという新たな目標ができたことが、生き甲斐となり、精神的な充実につながって、がんと闘う力を強めてくれた側面もあるのではないだろうか。

 ちなみに僕もバケット・リストをつくっていて、すでにいくつかは実行している。そのひとつが、新車を買うこと。それまでのクルマはもう10年近く乗っていたので、僕の人生で最後の新車を、加入していた医療保険から下りた保険金を注ぎ込んで買ってしまった。

 本来は医療費や今後の生活の補填のために使うべきお金だと思うが、自分のハッピーを追求すると決めた僕に迷いはなかった。妻にはもちろん(!?)事後報告。それを知った時、妻が呆れ果てた顔をしたのは言うまでもない。

 バケット・リスト作成に次いで、ハッピーとエンジョイの実現のために僕がおすすめしたいのは、常に“スマイル”と“大きな声”を意識すること。

 まず“スマイル”について。長く入院して感じたのだが、重い病気を患っている人ほど表情が暗く、スマイルが少ない。状況的に仕方のないことだとは思うし、体調が悪い時は笑顔になれなくても当然だ。僕自身、抗がん剤投与後に5日間寝込んでいた時は、スマイルどころではなかった。

 でも、体調が多少良い時は、もっとスマイルを出しても良い、いや、出すべきではないかと思う。「病は気から」「笑う門には福来たる」という言葉もあるように、病気と闘い、残りの人生をハッピーに過ごすには、スマイルを増やし、気持ちが前向きになるように、“仕向ける”のも大切ではないだろうか。

 僕は入院中、本当に体調がしんどかったあの5日間を除いては、なるべくスマイルを絶やさないようにしたつもりだ。それは、しんどい日々を、少しでも明るく、前向きな気持ちで過ごすのに有効だったと感じている。