国籍選択の義務を怠り
選挙公報に虚偽記載した蓮舫氏
そもそも国籍とは何か。また、なぜ二重国籍が生じるのか。
国籍の基本的な機能は、その国に住むことが保障され、国際法上、海外で政府の保護を受けられることだ。
ところが、フランス革命後、参政権と兵役義務が加わり、第一次世界大戦時には仏独二重国籍者が多くいたため、厄介なことになった。
そこで、1930年に国際連盟で「国籍抵触条約」が結ばれ、単一国籍を原則としつつ、現実に存在する二重国籍への対処が定められた。
しかし、欧州諸国では父系主義だが、米国などの新大陸では出生地主義が主流である。移民が国籍を取ってくれないので、二重国籍でも国籍を取らせたかったのだ。
理想としては、条約で国籍についての各国法を統一し、単一国籍の原則を徹底し、二重国籍だった人の扱いを定め、二重国籍は認めないが特別の配慮を部分的に認めるべき場合などについて定めるのがよい。
だが、制度が各国で違い過ぎるし、具体的な利益も国によってそれぞれなので、進まない。逆に、男女平等が進んで、父系主義優先が崩れてもいる。
日本の場合、外国から帰化するには、帰化の仮許可が出た後、外国籍を離脱し、その証明書を法務局に提出し、本許可が出て、国籍が付与される。
しかし、国籍離脱が不可能もしくはそれに近い場合には、法務大臣が特例を認めることもまれにある。
逆に外国の国籍を取得した場合には、日本国籍は失われる。国籍取得を日本政府が知らないこともあるが、旅券更新のときなどに発覚すれば日本国籍を剥奪される。
米国などの出生地主義の国で国籍を与えられた場合、留保手続きをとって、22歳までに日米どちらかの国籍を選択することになる。
そして、23歳の誕生日が来る前に、市役所などで「国籍選択宣言」をするか、「国籍離脱証明書の提出」をする。前者だと、その後にどちらかの国籍を離脱しなければならないが、強制はされていない。
国籍離脱が不可能だとか非常に時間や費用がかかるケースがあるためだが、強制されていないことが、法に適合しない多くの二重国籍者を生み出している原因だ。
父母の国籍が違うため両方の国籍を取得した場合にも、同様の国籍選択が義務づけられている。
蓮舫氏は、生まれたときは父と同じく台湾(中華民国)籍だったが、17歳のときに法律改正で母の日本国籍も取れることになったため取得。23歳になるまでに国籍選択をすべきなのに放置し、しかも、参議院選挙の立候補時には「日本に帰化」したと選挙公報に虚偽記載した。
結局、2016年に私から二重国籍のままの可能性を指摘され、だいぶ抵抗したが、同年10月7日に国籍選択宣言をし、台湾籍は抜いたようである。
女性が国際結婚すると、自動的に相手国の国籍を与えられることがある。市町村ないし在外公館に届ける必要があり、法務大臣が日本国籍を取り消すかどうかを判断するが、意思とかかわりないのなら喪失しないで済むケースもあるようだ。一方、結婚を理由に国籍取得を申請した場合、日本国籍は維持できないのが原則だ。
いずれにせよ、国籍選択を求められない22歳まで、および、特殊な場合を除けば、二重国籍を正当化する理由はない。にもかかわらず、国籍選択の義務を怠って二重国籍でいる人を容認するのは、正直に手続きをした人とのバランスからも不条理だ。
なお、離婚や諸事情により、相手国の国籍から日本国籍に戻したい場合、その手続きは比較的簡単だ。したがって、両方の国籍を「念のために持つ」というのは、理由にならない。