蓮舫Photo:NurPhoto/gettyimages

権利は二人分だが義務は一人分?
二重国籍の「おいしさ」とは

 東京都知事選挙に蓮舫氏が立候補を表明したことを機に、二重国籍問題がクローズアップされている。

 蓮舫氏の二重国籍は、2016年に私があぶり出したもので、『蓮舫「二重国籍」のデタラメ』(飛鳥新社)という本にまとめているが、ここでは蓮舫氏の話題を離れて、ビジネスなどの世界でも問題になる二重国籍(厳密には三つ以上の国籍も含めた多重国籍)一般について論じたい。

 日本の国籍法では、二重国籍は認めていない。だが、そのことについて、人権侵害だとか、世界の潮流は二重国籍を容認する方向に向かっているなどと言う人がいる。

 蓮舫氏の二重国籍が発覚したときも、法律のほうがおかしいのだから問題ないという極論もあったし、政治家については諸外国の例に照らして問題だが、一般国民なら批判すべきではないという人もいた。

 リベラルといわれる人の中には、LGBT問題と同じように、国籍についても多様性が認められるべきだという人もいる。

 しかし、たとえば、二重国籍を認めている米国では国務省が公式に「推奨できない」としているし、フランスではテロ対策の一環として二重国籍の規制を強化し国籍剥奪まで行い、また、中国では二重国籍を厳しく禁止している。

 労働力不足から移民を受け入れたいドイツとか、ウクライナ紛争で兵力不足を補う必要のあるロシアなど、二重国籍規制を緩めた国もあるが、世界的に緩和する傾向はない。

 LGBTの人たちは、性別の変更や第三のカテゴリーの創設などを求めているが、二重国籍の人たちの場合は、二つの国籍を好きなように使い分けたいだけだ。

 本当であれば、二重国籍だと権利のみならず義務も二人分になるはずだ。ところが、実際には、権利は二人分だが義務は一人分になりがちであるからフェアではない。

 その典型は、選挙権と旅券についてだ。

 たとえば、日米の二重国籍の人は、米国の大統領選挙にも日本の総選挙でも投票できる。旅券も都合よく使い分けられる。北朝鮮への渡航を日本の外務省は厳しく規制しているが、日仏の二重国籍の人であれば、出国するときには日本旅券を使い、北朝鮮への出入国ではフランス旅券を使えば、パスポートに痕跡は残らない。

 二重国籍だと、両方の国で兵役に就く義務があるとか、二重に課税されるといったことも論理的にはありうるが、実際には多くない。したがって、前述の通り、二重国籍は「権利は二人分、義務は一人分」ということになり、本人にとってはおいしい。だが、公正さには反するだろう。