年長者が若い世代と向き合うときの心がけは……

 牛窪さんは、大学での講義やアナウンススクール(*2)での授業を通して、若い世代と接する機会も多いようだ。Z世代と呼ばれる彼・彼女たちは、牛窪さんの目にはどのように映っているのだろう。

*2 牛窪さん自身も講師を務める、メリディアンアナウンススクール

牛窪 2つの大学で、学生の就職活動に向けた講義をしているのですが、「自己PRがうまくできない学生が多い」という印象があります。「なぜなのか?」を考えてみると……彼・彼女たちは、“動画世代”であって、活字に触れる習慣が少ないからでは?と思い至ります。本をあまり読まない学生は「言葉」に対しての意識が薄いのかもしれません。だから、思っていることをうまく伝えられないのではないでしょうか。

 もう一つの特徴として、「平等」や「柔軟性」を好む世代だと思います。学校教育でSDGsを学んでいることもその理由のひとつでしょう。また、対人における上下関係をそれほど意識しない傾向も見え隠れします。

 そうした若年層(Z世代)に対して、年長者はどういう点に気をつけて接していけばよいのだろうか? 牛窪さんは、「たとえ、教える立場であったとしても、はっきり言い切ってしまわないこと」と説く。

牛窪 言い切ったり、押し付けたりする言葉はなかなか受け入れてもらえません。「これまではこうだったから」と、つい断定口調になってしまうかもしれませんが、言い切りの言葉を使うと、相手に価値観を押し付けるイメージを与えてしまい、拒絶されてしまうのです。語尾に気をつけて、「〜するべき」といった強い言い方ではなく、「〜したほうがいいよ」と、表現を柔らかくするのがいいでしょう。

 また、いまの若い世代は、“聞いてほしい世代”だと思います。「どうしたらいいと思う?」と、相手の意見を聞くと、答えが出てきたりします。聞いても、言葉が何も返ってこないこともありますが、そうしたときは、「私はこうだったけど、それに対して、どう思う?」と、自分の経験を語ってあげながら、「どう思うか?」を聞き出します。言葉がうまく出てこないときも、丁寧に聞き続けたり、質問を投げかけたりすると、相手の考えがだんだんまとまり、思っていることを話せるようになります。若い世代に対しては、年長者が歩み寄り、寄り添っていく姿勢が大切だと思います。