6月の金融政策決定会合で追加利上げか
個人も身を守るために発想の転換を!

 この30年ほど、企業の借り入れ、住宅や自動車のローン、カードローン、普通・定期預金、資金運用など、超低金利の影響が波及した分野は多い。金利は付かないし、付いたとしても小さいから気にしなくていい――こうした発想が国民に根付いた。

 しかし、金利のある世界になれば、そうした発想は通用しない。さまざまな変化が予想される中、最も重要なのは、金利上昇で家計や企業などの金利支払い負担が増えることだ。

 まず、住宅ローンに影響が出る。6月から、大手行やネット銀行は固定型の住宅ローン金利を引き上げた。3メガバンクの10年固定型の基準金利は3.89%(平均)、0.08%上昇する。これは11年以来、約13年ぶりの水準だ。

 6月13~14日に予定する金融政策決定会合で、日銀が追加の利上げを実施するとの予想もある。今後の利上げ予想も高まる場合、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)に上昇圧力がかかるだろう。翌日物金利の上昇で、変動型の住宅ローン金利も上昇するだろう。

 一方、金利上昇により、収益力が停滞気味の企業の淘汰(とうた)が加速する恐れもある。コロナ禍対策だったいわゆる“ゼロゼロ融資”(元本返済と利子支払いを一定期間免除する支援策)の返済に、人件費や資材価格の高騰、さらに借入金利の上昇圧力が加わると、企業倒産が増加する懸念は否めない。

 金利上昇は株価調整リスクも高める。金利が上昇することで、長期に企業が生み出すと予想されるキャッシュフローの現在価値は小さくなる。預金金利、無リスク資産である国債投資の妙味から、株よりもリスクの低い資産への資金配分も起きるだろう。

 他方、わが国の金利上昇が続くと、日米の金利差が縮小する可能性が高まる。それは、円安の抑止効果として働くことが予想される。時間がかかるかもしないが、どこかの時点で行き過ぎた円安が少しずつ是正されることになるかもしれない。

 先述したさまざまなリスクから、当面、世界的に物価が高止まりする傾向は残る。物価安定のために、日銀が想定よりも早いタイミングで金融政策を調整し、追加利上げなどを実施する可能性が高まっている。金利上昇リスクから自らの身を守るために、個々人が頭の中にある「低金利環境は続く」といった発想を切り替えたいものだ。