国債の買い入れ額を減額はサプライズ
長期、超長期で金利上昇が加速

 4月末の0.87%から5月末は1.07%へ、わが国の長期金利は約0.2ポイント上昇した。1カ月間の金利上昇幅としてはかなり大きい。それに加えて、日銀が追加の利上げを実施するとの観測は増えた。

 名目賃金を上回るペースで食料や日用品などの価格が上昇しているが、物価の安定を目的とする日銀にとって、さらなる物価上昇は阻止しなければならない。人手不足で賃金が上昇しているのに加えて、今春からは物流のコストアップ問題もあり、サービス価格(持家の帰属家賃を除く)の上昇圧力も強まった。

 物価上昇ペースを緩めるため、日銀が金融政策の調整を行う必要性は高まっている。5月13日、日銀は国債の買い入れ額を減額した。一部ではサプライズと評されるほどで、これをきっかけに、長期、超長期金利を中心に金利上昇が加速した。今のところ小幅であるが、翌日物の金利が上昇する場面も増えた。金利のない世界から、金利のある世界に確実に移行しつつある。

 日銀は、「金利がプラス圏で推移する環境が近づいている」との調査結果も発表している。5月20日、『1990年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査』を公表したのだが、この中では「低金利政策が産業界の新陳代謝を停滞させた(超緩和政策の副作用)」との見解も示した。コストアップ分を商品へ価格転嫁すること、つまり値上げは当然と考える企業も増えている。

 5月下旬、日銀が開催した「2024年国際コンファランス」の基調講演で、内田眞一副総裁は「デフレ環境の終焉が視野に入りつつあり、物価も金利も上がらないとの“思い込み(ノルム、慣習などと訳されることも多い)”が変わりつつある」と語った。

 コストプッシュ型ではあるが、わが国のインフレ率は2%を上回る状況が続いている。外国為替市場での円安圧力もあり、追加的な政策金利の引き上げなど金融政策の微調整を段階的に進める必要性は上昇している。