よりよいセルフインタビューを
実施するための重要ポイントは?

 やはり香山さんがいい助言をくれます。自己認識を深めるインタビューする際に大切なのは、「大事な人に対するように、敬意をもってインタビューする」、しかも「変に『ヨイショ』しておだてたりするのではなく、まっとうに1人の人間として丁重に接する」こと。自己陶酔につながりかねない安易な賛美の姿勢ではなく、「いろんな質問をたくさんして、じっくりゆっくり聞いてあげる」姿勢を持つのがポイントです。

 その対策法として、かなり具体的な提案がなされています。安心できる環境をインタビューの場として選んだり、好きなお菓子やジュースを用意したり、追加で時間が必要なら別日もあると宣言したりするといったことです。香山さん自身は、「好きな店でご飯を食べながら」「色んな植物を見ながら」「5日休んでから再考したり」するインタビューがよいのではないかと提案しています。

 もちろん、香山さんと同じことをする必要はありません。どうすれば「自分を丁重に扱う」ことになるのかは、人によって違うはずですよね。お気に入りの料理をテイクアウトして、確認のためにインタビューの様子を撮影しながら思いついたことを話すのがいい人もいれば、植物園に通いながら、1カ月かけて少しずつ問いを消化していく方がいい人もいるでしょう。

 関係する主題の映画をみて、その感想を聞き出した上で、その言葉を深掘りすることで、結果的に自分の姿をあぶり出そうと考える人もいるかもしれません。それぞれの感覚に合わせて、しっくりくるアプローチを探ればいいと思います。いずれにせよ、人の目を気にしなくて済むセッティングがよいとは思いますが。

 私の場合は、ファミレスやファストフード店のような飾らない場所を確保して、コーヒーを飲みながらまっさらなノートに書き込む、あるいは、いつも使っている机とその周辺をまっさらに片づけて雰囲気を変えた上で、オフライン状態のパソコンのテキストファイルに書き込むなどの手法がちょうどいい気がしています。私にとっては、「日常を踏み越えず、あまり豪華にしない」というのが、自分を粗末に扱わないために必要なようです。