水虫が皮膚がんのリスクになる!?「足の裏のほくろ」には要注意Photo:PIXTA

 皮膚がんの一種であるメラノーマ(悪性黒色腫)は、メラニン色素を産生する「メラノサイト」という細胞のがんだ。日本人の発症頻度は10万人に1~2人で、希少がんの部類に入る。

 日本人のメラノーマの場合、最も発症頻度が高い部位は、足底、いわゆる足の裏だ。メラノーマの発症リスクは紫外線とされており、なぜ、ほとんど陽に当たらない足底で発症するのか謎だった。

 そこで東京慈恵会医科大学皮膚科学講座の研究チームは、胃がんとヘリコバクターピロリや子宮頸がん/咽頭がんとHPVと同じく、感染症が発症の引き金となるという仮説を立て、足白癬菌(水虫)との関係を調べている。

 対象は、足底メラノーマ患者30例(メラ群)と足底メラノーマ以外の皮膚病を有する患者84例(非メラ群)で、顕微鏡検査で白癬菌の有無を確認した。

 その結果、メラ群の60%が足白癬菌に感染していた一方、非メラ群は29.8%にとどまった。

 水虫のタイプ別では、足の裏やかかとの角質が分厚くなり、表面の皮がボロボロむけていく「角質増殖型」との関連が有意に強いことも判明している。

 研究者は、一部の足底メラノーマの発症に足白癬が関与している可能性を指摘し、「足白癬の予防もしくは治療で足底メラノーマの予防が期待できる」としている。

 4月に報告された日本臨床皮膚科医会主導の疫学調査によると、日本人の6人に1人は自分でも気が付かずに足/爪に白癬菌を飼っているらしい。たとえ白癬を疑う症状があったとしても、市販薬でお茶を濁しているようだ。

 ただ足・爪白癬は単なる目視のみでは専門医でも誤診することがある。確定診断には、適切な検体採取と顕微鏡検査が必要だ。

 もちろん、全ての足白癬菌感染者がメラノーマ予備群ではないが、間違ったセルフケアでリスクを放置するよりは、皮膚科できっちり検査・診断をしてもらうに越したことはないだろう。

 また、それまで存在に気付かなかった足底の“ほくろ”が数カ月で急に広がってきた場合は即、皮膚腫瘍科に紹介してもらおう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)