「うつ病になってしまってから退職するまでの具体的な流れがあります」
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
うつ病と「退職」
現代社会では、仕事をする上で「うつ病」という病気は切り離せない存在になっています。
「心が弱い人がなる病気だから、自分は大丈夫」
「自分はぜったいにそんなふうにはならない」
このように語る人ほど、後々になって「まさか自分が…」と後々になって悩む場合があります。
ですので、実際にうつ病になってしまったとき、退職するまでの過程をまとめてみました。
あくまで一例ですが、参考になれば幸いです。
うつ病だと認識する
うつ病とは、気分の落ち込みのほかに、「興味の減退」や不眠や自分を攻める気持ちが止まらないなどの様々な症状が見られる精神疾患です。
発熱や痛みなど、身体の異常のように目立つ異常がないことで、当人や家族でも気づかないことがあったりするのです。
そのため、なかなか自分ではわからないこともありますが、上述したような気持ちの落ち込みや欲求の減退、頭が回らないなどのいつもと異なる状態が2週間ほど続いた場合には、病気も疑ってみると良いでしょう。
精神科を受診する
うつ病かもしれないと思ったら、まずは精神科を受診しましょう。
電話で相談するのも一つの方法です。
診断を受けたからといって必ず薬を飲む必要はありません。
薬を飲まない選択肢もありますので、一人で悩んで解決しないときにはまずは相談だけでもと思って受診も検討してください。
精神科受診のメリットとデメリット
メリット
○ 内服治療が受けられる
○ 休職などの相談ができる
○ 診断書や申請書など、公的書類の作成を依頼できる
デメリット
○ うつ病の診断を受けると、新規の生命保険や住宅ローンの審査が厳しくなることもある。
○ 世間体や社会的な目が気になる
○ 通院が大変
生命保険や住宅ローンを考えている人は、精神科の受診前に利用したほうが無難かもしれません。
また、自立支援医療という制度があり、病気によっては通院費用が抑えられる場合があります。
休職を勧められたら
休職のメリットは、会社に籍を置いたまま長期休暇が取れることです。
復調すれば会社に戻れますし、退職するにしても休職中も給与が支給されます。
休職の期間はその人の病状や医師の判断によっても異なりますが、3ヵ月程度の休職期間が得られる場合もあります。
人によってはしっかりと休み、人事配置や職場環境の改善などによって改善して、以前と同じように復職できることもあります。
困ったときにはまず休むことを考えてみてください。
傷病手当金とは?
うつ病で休職・退職した場合、給料の3分の2が最大で1年6ヵ月間支給されます。
このお金は健康保険から支給され、退職後も条件を満たせば受け取れます。
傷病手当金を受け取るためには連続する3日間の休日(待機期間)が必要であり、その後に受給が開始されます。
この期間中に退職すると受給資格を失う可能性があるため「3日間の待機期間」を確保するには注意が必要です。
退職に必要なこと
うつ病になると退職勧奨を受けることがあります。
退職勧奨は会社都合ですが、自己都合での退職届を書かされることもあります。
自己都合退職では失業手当の受給開始までに待機期間があるため、不利になる場合があります。
退職時の手続きには、離職票の退職理由の確認をし、必要に応じて会社に訂正を求めることが重要です。
辞職を切り出すポイント
● 直属の上司に伝える
● 上司の手が空いているときに切り出す
● はっきりと辞意を表明する
● 会社の不満は話さない
● 引き止めは断る
これらを守りつつ、それでも退職を伝えることが恐いと感じる場合などは、最近は退職代行といったサービスも存在しています。
なので、ときには利用を検討しても良いかもしれません。
退職するときに重要な書類
退職時に受け取るべき書類
● 年金手帳
● 雇用保険被保険者証
● 健康保険被保険者資格喪失証明書
● 退職証明書
● 離職票(再就職が決定していれば不要)
● 源泉徴収票
● 厚生年金基金加入員証(加入していれば必要)
特に源泉徴収票は翌年の確定申告に必要なため、必ず受け取って保管しましょう!
うつ病は発症してしまうと思考力が低下したり、自責感などによって正しい選択ができなくなってしまうことがあります。
そんなときに慌てないためには事前に備えておくことが大切です。
万が一、ということもあると考えて、これらのプロセスを思考の端にでも置いておいてください。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。