千葉銀行 執行役員 デジタル戦略部長 柴田秀樹さん Photo by Mayumi Sakai千葉銀行 執行役員 デジタル戦略部長 柴田秀樹さん Photo by Mayumi Sakai

2023年4月、千葉銀行は新たなDX戦略「ちばぎんDX3.0」をスタートした。「面白い銀行」「千葉銀行“で”いいよね」を目指し、アプリの利用者増で振込の取引量が飛躍的に増えたり、独自の人材育成を行ったりと目に見える成果を上げている。同行は2021年からDXに取り組んでいるが、最初の2年は「顧客体験の創造って結局何なんだ?」「千葉銀行のファンになるってどういうこと?」という問いに答えが出ず、暗中模索だったという。頭取や仲間とともに「これで誰が幸せになるの?」とひたすら問い続けた2年間を経て、ブレイクスルーは「銀行に対してニーズなんてあるか? ないわ」と気付いたことだった。(ノンフィクションライター 酒井真弓)

地方銀行のDXが目指すべきものとは?
千葉銀行は「最高の顧客体験の創造」

 国内でも、早い段階でDXやオープンイノベーションの必要性が叫ばれ始めたのが、銀行をはじめとする金融機関だ。単なる利便性の追求にとどまらず、顧客のニーズを的確に捉えたサービスの提供、非金融領域への進出も活発化している。

 筆者は昨年、熊本の肥後銀行を取材した(https://www.salesforce.com/jp/blog/jp-dx-compass-higoginkou/)。同行は、新たなサービスの一つに「地域企業のDX支援」を掲げ、SIerやITコンサルタントのような役割を担っていくと示唆した。頭取の笠原慶久さんは、「もう金融サービスだけでは世の中のニーズに応えきれない。地域の役に立つことなら、DXから人材の供給、脱炭素まで、何でも取り組んでいこうと思っています」と話してくれた。そして、「その地域にどんな銀行があるかで、地域の未来が変わる」とも。地域に根ざした存在だからこそのDXのあり方。俄然、他の地方銀行の取り組みも知りたくなった。

 そんなわけで、今回は千葉銀行に注目したい。2023年4月にスタートした新DX戦略「ちばぎんDX3.0」は、最高の顧客体験の創造を主眼に、大きく2つの骨子から成る。1つ目は「パーソナライズ戦略」。顧客一人ひとりに寄り添い、最適なサービスを提案する。2つ目は「地域エコシステム戦略」。法人や個人、行政を含めた地域のステークホルダーと手を携え、地域経済の発展に貢献する。

 これらを実現すべく、千葉銀行では金融事業の進化はもちろん、非金融事業にも挑戦している。人手が足りない地域企業への人材支援やDX支援もその一つだ。また、データを駆使した顧客体験(CX)の創出には、高度なスキルを備えたDX人材の育成が欠かせない。ITベンダーや異業種への出向も織り交ぜた、DXトレーニー制度にも力を入れている。