80代、90代と肉体年齢は高くても、魂年齢が若ければ、エイジレスで容姿も若々しく見える。それには、何事にも好奇心を持って行動を起こし、素直に感謝し、笑顔になって、想いを口に出すことが必要。そんな自然体の姿勢が、「心を老いさせない」ポイントだという。※本稿は、高橋ゆき(高の字は、正しくははしごだか)『ウェルビーイング・シンキング』(日経BP)の一部を抜粋・編集したものです。
記録ではなく記憶を残そう
あなたの人生のアーカイブ
アーカイブとは、情報やデータを整理し、記録する場所。メールボックスのアーカイブは、残しておきたいメールを保存するために使います。私は、人生にもアーカイブがあると考えています。そこに残したいのは、記録ではなく“記憶”です。
子どもの頃から、「ナイアガラの滝に行ってみたい」と夢見ていた人が、大人になり、旅行に行くチャンスをつかみ、実際にナイアガラの滝を目にしたら、心から感動して「一生忘れたくない」と思うことでしょう。その時、目にした景色、滝の音、肌に吹く風など、すべてを特別な記憶として人生のアーカイブに刻み込むはずです。
私は、そういう楽しく幸せな記憶を一つでも多くつくることを意識しながら毎日を過ごしています。
人によって、残したい記憶はいろいろあるでしょう。子どもが初めて立ち上がったとき。孫をこの手に抱っこしたとき。仕事で素晴らしい成果を出したとき――。
「今日は、人生のアーカイブに何を保存しようか」。そう意識するだけで、一日一日がいとおしく感じられ、大切に生きることができるような気がします。
人はこの世を去るとき、これまでの人生が走馬灯のように脳裏を駆け巡るといいます。私はその時、人生のアーカイブに残した記憶をすべて見返したい。そのために、心が動くメモリアルな出来事を、一つひとつ、丁寧にアーカイブに刻もうとしているのです。
加齢こそがもたらす
新たな景色と出会える楽しみ
私が歩んできた道は、凸凹道もあれば、いばらの道もありました。回り道もたくさんしてきました。挫折、葛藤、言葉にならない悲しみ、衝撃……。いろいろあったけれど、今、振り返ると、どんな瞬間もいとおしく思えて、すべてに感謝しかありません。
50歳を過ぎた今、思うのは「歳を取るのも悪くない」ということです。動作が遅くなったり、覚えていたはずのことを思い出せなくなったり、歳を重ねると、今までの自分とは違う自分に遭遇します。でも、そういう状態になって初めて人の痛みや辛さを感じられるようになったり、人の優しさや情けに気づけたりします。加齢と共に、人生で見える景色が変わってくるのです。
世の中は、「アンチエイジング」ばやりです。加齢を嫌い、そこからくる衰えにあらがおうとする傾向は強まるばかりです。