不思議なことに――いや不思議ではないのかもしれないが――世間にはむしろ〈悪魔のカクテル〉をつくって飲んでしまっている人の方がずっと多い。

慢性的な“うつ”につながる
悪魔のカクテル……

 強いストレスを長いこと受けているせいで、心配と落胆と愚痴ばかりの日々。ポジティブな感情が乏しく、人生が灰色に見える。来る日も来る日も同じことの繰り返しで、ガラスケースに閉じ込められたように現実味がない。大きな喜びを感じることなく人生が進んでいく。長い間〈悪魔のカクテル〉ばかりを飲んでいると、そんなふうに気分の落ち込みや不安、慢性的なうつへと移行してしまう可能性がある。

 では、なぜそんな〈悪魔のカクテル〉を飲んでしまうのだろうか。私が知る限り、3つの大きな理由がある(実際にはもっとたくさんあるだろう)。

1.何よりも、その逆があるということを習ってこなかったから。学校では人生で一番大切な知識を教えてくれない。感情とは何なのか、今の自分の感情はそのどれなのか、感情がどのように機能するのか、そして何よりも、どうすれば自分の感情を方向づけられるのか。感情は言動すべてに影響するのだから、学校のどんな科目よりも大事な知識のはずなのに。

2.私たちがつくり上げた社会では成功をお金で測るから。休息を取ることを良しとせず、ひたすら頑張ってしまう。

3.つい周りの人の真似をしてしまうから。友人や同僚が日々〈悪魔のカクテル〉を飲んでいたら――つまりストレスやプレッシャーにさらされ、悪いニュースばかりを気にし、他人と自分を比較しては常に何かを追いかけていて、充足感を覚えることも少なかったら――あなたも同じようになってしまう可能性は高い。受動喫煙のようなものだ。

 私がうつから脱することができたのは、ひとえに自分の感情がどこから生まれ、生理学的、神経学的にどうなっているのかという知識を得たおかげだ。