デートやプレゼンで役立つ?やる気や自信がみなぎる「天使のカクテル」とは写真はイメージです Photo:PIXTA

コミュニケーションの専門家、デヴィット・JP・フィリップ氏は、自身の感情を生理学や神経学で紐解き、19年間悩まされたうつを克服したという。そんな彼が、安定した精神状態を手に入れるために必須の脳内物質から作られる〈天使のカクテル〉について解説する。※本稿は、デヴィッド・JP・フィリップス(著者)、久山葉子(翻訳者)『最適脳 6つの脳内物質で人生を変える』(新潮新書、新潮社)の一部を抜粋・編集したものです。

一杯で爽快感が得られる
天使のカクテルとは

 バーカウンターに腰をかける。擦り切れた革のスツールが物語るのは、長年の間に酒とともに流し込まれた様々な思いだ。同じ数だけ、いやもっと少ないかもしれないが、祝杯も上げられたことだろう。バーでよく出会うちょっとすえたような古い匂い。バーカウンターに身を乗り出すと、バーテンダーがすぐこちらに気づいた。

「〈天使のカクテル〉を1つ」そう注文すると、バーテンダーの顔に好奇心が浮かんだ。

「へえ、それは初めて聞いた。いいですね。もちろんです。何を入れましょう」

「少しテンションを上げたくて、モチベーションも欲しい。だからドーパミンとセロトニンにしようかな」

 しばらくすると金の盆からグラスがうやうやしく差し出された。見惚れるように美しいマティーニグラスで、サーベルピックにはありきたりなグリーンオリーブではなく、黄色のパイナップルが刺さっている。

「お気に召しますように」

 自分の精神状態をこんなに簡単に変えられたらどんなに良いだろうか。近所のバーに行って、なりたい精神状態を伝え、乾杯して、支払いをして、帰る時にはまったく違った気分になれていたら。いや、それよりも簡単だったら?自分の脳の中に6つの物質を生産する工場があって、欲しい時に欲しい気分をつくることができたら?おまけに完全無料。

 これは本当の話で、自分自身がバーテンダーとなり、どんな精神状態でいたいかを決められる。

 ドーパミンとノルアドレナリンをみなぎらせてやる気を最高潮に出したい?オキシトシンに満たされて、誰かとじっくり時間を過ごしたい?セロトニンのおかげで心穏やかでいたい?エンドルフィンで幸福感を感じ、テストステロンが与えてくれる自信を持ちたい?