振り絞るような久保田先輩の独白
寅子も「満点は取れない」戦いの中に
とはいえ、である。
優未がもしも84点を34点に書き換えていたのであれば、それはそれで大きな問題であり、優未からの遠回しなSOSであるとも言える。構ってほしい、注目してほしいといった気持ちから84点にわざわざ書き換えたのかもしれないのだ。
どちらにせよ、寅子と優未のコミュニケーションが取れていないことを示すエピソードである。
興味深かったのが、志半ばで夢を諦めざるを得なかった友人たちの思いを胸に働く寅子の姿に共感してきたはずの視聴者たちからも、寅子に「良き母像」を求める声があったことである。
もちろん反響は様々ではあるのだが、どちらかというと子どもである優未に思いを寄せ、寅子に母親として至らない点があるのではないか……とやきもきしているコメントが多く見られる。
ここで思い出すのが、寅子と同じく初めて女性弁護士となった同志の一人である、久保田先輩こと久保田聡子(小林涼子)の言葉だ。結婚・出産を経て弁護士に復帰した久保田先輩は、久しぶりに会った寅子の前で、以前のように「~だ」というような言い切りを使わず、「女性らしく」話している。言動を嗜められたからなのだという。
そして「夫の実家に帰り、弁護士も辞めることになると思う」と話した後で、振り絞るようにこう言うのである。
「結婚しなければ半人前、結婚すれば仕事も子育ても満点を求められる。絶対に満点なんて取れないのに」