男性は働いて家族を養うことで一人前、女性は家庭を守り良妻賢母であれとされた時代において、働く女性はイレギュラーな存在であり、仕事も家事も、子育ても完璧にこなすことを求められた。いや、どちらかといえば、仕事はそこそこでも、子育てにこそ力を注げとされてきたのが女性だろう。
寅子もまた、絶対に満点を取れない試験に挑まされている女性の一人である。そう考えると、寅子が優未に言う「間違えた部分はきちんと復習するのよ。そしたら次は100点だから」は、ゾッとするほど痛烈な言葉にも聞こえる。
女は「母性」があってなんぼ?
時代が変わっても根強いバイアス
働く女性の姿に共感し涙しながらも、一方で子育てこそ女性の第一の仕事という意識が今でも根強いように感じるのはなぜだろう。
女性がたとえ仕事で成功しても、「子育てに失敗」すれば負け犬、というような風潮は今でもある。著名人の子どものスキャンダルが報道された際、著名人が女親の場合の方が子育ての責任を問われやすい。
少し話が転ずるが、寅子の上司役である多岐川幸四郎を演じる滝藤賢一は、約10年前にももいろクローバーZの『泣いてもいいんだよ』という歌の「父の日バージョン」のMVに登場している。
涙なしには見ることができないMVなので、未見の方はぜひこの機会に検索してほしいのだが、このMVの中で滝藤は妻に先立たれたシングルファザーを演じている。働きながら幼い娘を必死に育てるも、残業続きでさみしい思いをさせ、娘が就寝するまでに帰れないこともある。思春期に娘はグレてしまい、それを見て父親はうなだれる。そしてさらに歳月がたち……という構成である。