行内中をくまなく探したが
見つからなかったレピータ

 私は、躍起になってこのレピータというものを探し始めた。というのも、レピータさえ正確に作動していれば、iPadのデータ更新に時間を割かれることもなくなると思ったからだ。

 私が働くM銀行では、担当者1人に1台iPadが支給されている。定期的にアプリやOSのバージョンアップがあるのだが、Wi-Fiが使えないと途方もなく時間がかかり不便なのだ。そのため店内に小さなアンテナがあり、その周辺のみWi-Fiが使えるようになっている。

 しかし、くまなく探したものの、レピータらしき機器は見つからなかった。

「もう捨てられたのかなあ…」

 工事の時に不要物と見なされ、捨てられたのかも知れない。その可能性は十分にあり得る。銀行員の性なのか、悪い報告ほど早いほうが良かろうと、ドコモに電話をした。そして、誤って廃棄してしまったかも知れないと正直に話した。

「あの機器はリースで御行に貸し出しているんで、ないと困るんですよ…。もう少ししっかり探してもらえませんかね」

 言葉は柔らかいが、要するに「もっとしっかり探せ。見つからなかったら大変なことになるぞ」というニュアンスに受け取れた。

「は、はあ…分かりました」

 ロビーにいたお客から、店内にWi-Fiは完備されているか聞かれたことがある。今やWi-Fiは、スマホやPCを扱う人にとっては必須の設備であり、重要な社会インフラになりつつある。電車内、駅構内、大学、カフェや公共施設など多くの人が行き交う場所では使えて当然であり、使えない状況だと支障をきたす場合も多い。商店や飲食店ならば売り上げに関わることもあろう。

 日本は、海外に比べて圧倒的にWi-Fi環境が悪いらしい。外国人観光客から話しかけられ、道を尋ねられると思いきや「Wi-Fiが使えないので使える場所を教えてほしい」と訊かれたことがある。ついでに「日本はこんなにテクノロジーが進んでいるのに、なぜWi-Fiが普及していないのか?」とぼやかれてしまった。