NTTドコモ関連会社から
かかってきた突然の電話
「課長、ドコモの関連会社から電話が入ってます。出ますか?」
「ドコモ?なんだろう?つないで下さい」
総務担当の峯岸さんが、内線経由で電話を取り次いだ。
「目黒課長さんですね。NTTドコモの関連会社、ドコモCSの猿渡と申します。本日、弊社が10年前に設置したレピータの撤去に伺いたいのですが」
「レピータ?」
「はい、室内など電波が弱くつながりにくい場所に設置している、電波増幅機器のことです」
「はあ…その機械はうちのどこに?」
「こちらも分かりません。課長さんの方がお詳しいのでは?」
「そんな引き継ぎは受けていないですねえ…。特徴は?」
「黒色で弁当箱ぐらいの大きさで、赤色のキノコのイラストシールが貼ってあります。目立つので一目で分かると思います。他の支店では、ほとんどがATMのバックヤードにありました」
ATMのバックヤードとは、利用客が出し入れする現金を補充したり回収したり、故障や不具合をメンテナンスする部屋のことだ。銀行によっては、メンテ室や保守室などと呼ばれることもある。
ATMは24時間電源が付きっぱなしで、ものすごい熱を発することから、真冬でも絶えず冷房がキンキンに効いている。ATMが稼働していない夜中であっても、警備上必要な信号を送受信したり、バックアップデータのやりとりを本部のホストコンピュータと行ったりするため、電源は切らない。
万一、空調が故障した場合はATMにも影響があるそうだ。したがってATMのバックヤードは、これらの保守に使われる機材が置かれ、雑然としていることも多い。とはいえ、ATMとは関係のない機器が唐突に設置されることなど、防犯上あり得ない。