鼻をつまんだ女性写真はイメージです Photo:PIXTA

体に不調をきたしているまさにその時、心はSOSサインを発しているのだ。日本ストレス学会理事を務める心療内科医が、心因性肩こりのメカニズムや、使い方によって毒にも薬にもなる「香り」との付き合い方を指南する。本稿は、海原純子『いい気分の作り方 困難な時代の心のサプリ』(毎日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

抑え込まれた感情が
表面化したのが肩こり

 日本人に多いと言われている肩こり、あなたはいかがですか?体の症状は心のサインでもあるという話をしたことがあるが、肩こりも同様。たかが肩こりとあなどってはいけない。

 肩こりが続いて筋緊張性頭痛が起きることもあるし、がんこな肩こりの原因に高血圧や眼精疲労があることも多い。ちょっと重い荷物をもったり、電車に長時間座っていたから肩が痛い、という一時的な肩の痛みと、しつこい肩こりは違う。血圧に問題なく、目も疲れていないのに肩こりでつらい、というときには精神的な問題があることもしばしばだ。

 アレクサンダー・ローエンという心理学者は、感情を抑圧すると慢性的な緊張で背中と肩の筋肉が「凍結」してしまうと語っている。確かに、悲しみや怒りを抑え続けていると、身体症状として肩こりが生じるものである。単に忙しくて睡眠不足というときには、肩こりにはなりにくい。気を使い、嫌なことを我慢し、抑えた感情に気づかずそのままにしていると肩こりが起こる。

 もしあなたに、そんな肩こりがあるようなら、ため込んだ怒りや悲しみをきちんと体から掃除しておくことが大切。静かな1人の時間をつくり(5分でも10分でもいいから)、抑え込んだ感情が何なのかを点検してみよう。運動に肩こり防止の効果があるのは、単に筋肉を動かす、という意味だけでなく、体を動かすことによって一種の感情表現ができるからである。

 しかし、なんといっても効果的な肩こりの予防法は、忙しさを「自分の納得のいく」忙しさに変容させることだろう。同じ睡眠不足でも、充実した仕事をしたり、楽しいひとときを過ごしたときなら肩こりは起きない。だが、嫌々ながら納得のいかないお付き合いで過ごす徹夜は肩こりのもと。

 肩こりは、人生の自分らしさを示すバロメーターかもしれない。