「とりあえず」は
緊急時だけにしたい

 ある集まりで、「最近は野菜や果物に含まれるビタミンなどの栄養素が、昔に比べて減っている。普通に野菜を食べていると栄養不足になる。だから、サプリメントを摂取することが大切である」という意見を聞いた。

 話していたのは、サプリメントを売っている企業のトップ。聴衆はみな納得、という感があった。その意見はもっともなのだが、いや待てよ、するとあと10年後、20年後にはどうなるのだろう、と考えると大変なことだ。もし、野菜の栄養素が減っているのなら、その対策も考えていかないと、子供たちが大人になるころには、毎日サプリメントで食事をしなければいけなくなってしまう。

 緊急避難的な「とりあえず」の対策は大切ではある。だが、「とりあえず」ばかりだと問題が残る。たとえば体に不調をきたしたとき、「とりあえず」をやっているとなかなか治らない。

 職場で仕事量が多く、1人で残業を引き受けることもしばしばのBさん。頭痛がひどくじんましんが出て病院へ。とくに問題はないのでとりあえず痛み止めと塗り薬をもらっておさまった。

 そのまま仕事を続けたところ、数カ月後に胃痛がした。病院では胃の粘膜がただれていると指摘され、とりあえず薬をもらって服用した。薬を飲めば痛みは治まるので仕事を続け頑張っていた。ところが今度はめまいと立ちくらみで動けなくなり、結局休みを余儀なくされてしまった。

 Bさんの不調は体で表現するサインだったわけだが、「とりあえず」薬で抑えて根本的対策に目を向けようとしていなかったために、症状がさらに悪化してしまった。

「とりあえず」で問題なく解決できることもある。しかし、それでは済まないことも多い。そのつけが一挙にくると大変なのだ。環境も体も小さなサインに目を向け、根本的対策にも気を配りたいものである。