患者希望の「ヒルドイドソフト軟膏」は
どのくらい自己負担が増える?

 ヒルドイドの有効成分はヘパリン類似物質というもので、保湿や血行促進、抗炎症作用などのある外用薬だ。本来は、外傷や挫傷、血行障害などの治療に用いられる医薬品だが、美容目的での使用が問題になっている商品でもある。

 ヒルドイドソフト軟膏(0.3%)の1gあたりの薬価は18.5円なので、100gの価格は1850円(保険適用前の価格)。70歳未満の人は、この3割を自己負担するので、これまでは薬局で支払う薬剤費は555円でよかった(薬局では、この他に調剤基本料、服薬管理指導料などの調剤報酬がかかる)。

 だが、24年10月以降は、患者の希望で先発品を利用すると、選定療養の仕組みによって、後発品との差額の4分の1は全額自己負担になる。また、通常の医療費には消費税はかからないが、選定療養には10%の消費税が加算される。

 そのため、10月以降はヒルドイドソフト軟膏(0.3%)100gの患者負担(3割の場合)は813円となり、これまでよりも258円増えることになる。

 一方、ヘパリン類似物質クリーム(0.3%)の後発品の最高薬価は1gあたり5.6円なので、100gでも560円だ。後発品は薬剤費のすべてが公的医療保険の対象になるので、3割負担で168円。同じ有効成分の医薬品なのに、自己負担額は645円も差がつくことになる。

 ヘパリン類似物質クリーム(0.3%)の後発品のなかには、1gあたりの薬価が3.2円のものもあり、これなら100g当たりの自己負担額は3割で96円だ。後発品は、先発品と同じ有効成分で作られており、その安全性は国の基準をクリアしている。上手に使えば、家計の負担を抑えながら、必要な医薬品を利用できるのだ。

 今回の診療報酬改定では、先発品を使った場合の選定療養の対象(全額自己負担になる部分)は、先発品と後発品の差額の4分の1にとどめられた。だが、増え続ける国民医療費を削減するために、今後は選定療養の幅が薬価差の全額に広がる可能性も否定できない。特に、後発品との薬価差が大きい先発品は、患者の自己負担が重くなる。

 こうした制度変更を知らずに先発品を使い続けると、10月になっていきなり負担が増えてビックリすることにもなりかねない。先発品を使っている人は、どのくらい自己負担が増えるのかを事前に確認しておく必要がありそうだ。

 とはいえ、薬の専門家ではない一般の人が、「後発品の最高価格がいくらなのか」「後発品との差額がいくらになるか」「自己負担がどれくらい増えるか」といったことを自分で調べるのには時間もかかる。その点、薬の専門家である薬剤師なら、後発品の価格帯や供給体制にも詳しい。

 21年に一部の製薬メーカーで品質不正問題が発覚し、行政処分を受けたことに加えて、コロナ禍で医薬品の需要が増えたことで供給不足となっている後発品も多い。いきなり後発品を希望しても、手に入らないこともあるので、継続的に利用している薬のある人は、10月になってから慌てないで済むように、今から薬剤師に相談して服用する薬を決めるようにしたい。