後発品への乗り換えが不安なら
まずは医師に相談してみよう
このように後発品は医療費の削減には役立つが、すべての人が後発品に乗り換えればいいというものではない。後発品は、先発品と同じ有効成分の薬ではあるが、特許の壁があり、全く同じものを作ることは難しいからだ。
薬の特許には、(1)薬の成分など化学物質に対する「物質特許」、(2)薬の効能・効果を特定した「用途特許」、(3)薬の吸収や安定性を保つ工夫に対する「製剤特許」、(4)薬の製造途中で出てくる工夫に対する「製法特許」がある。
4つの特許の中で重要なのは、有効成分に関する(1)の物質特許だ。これが切れると、ジェネリックメーカーも後発品を製造できるようになる。だが、新薬の開発には莫大な費用がかかっているので、その権利を守るために、新薬メーカーは時期をずらして何段階にも分けて特許を申請している。
物質特許が切れても、後発品はその他の特許を侵害しないように作らなければいけない。また、(3)の製造特許や(4)の製法特許は公開されないことも多いため、有効成分は先発品と同じでも、形や製造方法まで全く同じものを作ることはできないのだ。
後発品の製造時には、「生物学的同等性試験」「溶出試験」を行うことが義務付けられており、体内に吸収されて血液中に現れる有効成分の濃度、薬の溶け方は先発品とほぼ同じことが確認されている。だが、薬の形状、薬を固めるための添加物は異なるため、人によっては「なんとなく効き方が違う」と感じることもあるようだ。
特に、てんかんなどの脳の疾患、精神疾患などの薬を服用している人の薬の乗り換えは慎重に行うべきだろう。これまで飲んでいた薬で体調が安定していたのに、薬を変えたことで症状が悪化してしまっては元も子もない。
今回の見直しでも、医療上の必要性がある場合は、これまで通りに1~3割の自己負担で先発品を利用できるという規定も設けられている。薬の処方権は医師が持っているので、後発品への変更に不安のある人は、まずは医師に相談してみよう。
取材協力/薬剤師 水 八寿裕(実務薬学総合研究所)