先発品と後発品の差額4分の1が
「選定療養費」の対象に

 日本では、医療の安全性と質を担保するために、安全性・有効性が確認されて公的医療保険が適用された治療と、安全性・有効性の不確かな保険適用前の治療を併用する混合診療を禁止している。このルールを破って混合診療を行った場合は、保険適用外の部分だけではなく、通常なら公的医療保険が使える治療についても、原則的には全額自己負担することになっている。

 ただし、患者の希望に沿った治療を行えるようにするために、厚生労働大臣が定めた一定の保険外治療については、部分的に混合診療を行うことが認められている。この保険外治療の枠組みのひとつが「選定療養」だ。保険適用外の選定療養については全額自己負担になるものの、公的医療保険が適用された治療は通常通りに医療費の一部を負担するだけで治療を受けられる制度である。

 例えば、入院時に患者の希望で個室を利用した場合、差額ベッド代は全額自己負担だが、保険適用の手術や処置などについては、通常通りの自己負担割合で治療を受けられる。紹介状なしで大病院を受診した場合の特別料金なども、この選定療養の枠組みで運用されている。

 今回、患者の希望で先発品を使った場合の自己負担も、この選定療養の仕組みを使って引き上げられることになった。対象となる医薬品や引き上げ方法は次の通りだ。

【患者希望で先発品を利用した場合の自己負担】
◆対象となる先発品
後発品の発売後5年以上経過した先発品、または後発品の置換率が50%以上となった先発品

◆全額自己負担になる金額
先発品の価格と、後発品の最高価格帯との差の4分の1

◆除外規定
・医師が先発品の銘柄名で処方している(処方箋を記載するときに、後発品への変更不可にチェックしている)などで、医療上の必要性があると認められる場合。または、薬局に在庫がないなどで、後発品の提供が困難な場合
・後発品の発売後5年以上経過していても、後発品への置換率が1%未満の先発品

 では、患者の希望で先発品を利用した場合、どのくらい負担が増えるのだろうか。70歳未満の人が、本人の希望で先発品のヒルドイドソフト軟膏という外用薬を使った場合の自己負担額を見てみよう。