表1-1:不正行為者の特徴同書より転載 拡大画像表示

 表1-1を見て分かるように、パルマーが伝えたかったのは、私たちの身近なところにこそ不正を犯してしまう人がいるということであり、時には私たち自身もそうなりかねない、という警告になります。

 日頃、何気なく仕事をしていると、自分がまさか不正に関与しているなどとは誰も思いませんし、仮に「不正です」と言われたとしても「何かの間違いでしょう」と言いたくなる状況に置かれることと思います。でも、不正とはそういうものである、とパルマーは言うのです。

 さらに、同じ組織で働く人の多くが不正に無関心であった場合、個人による不正とは異なり、その影響は大きくなっていきます。

目的達成への組織的活動が
不正の影響を大きなものに

 なぜかと言えば、いつの時代でも1人で仕事をするよりも多くの人がともに仕事をすることの方が、より大きな目的を達成することができるからです。1人で仕事をする場合には、必ずと言っていいほど、何らかの制約があったり、限界があります。1人ではできないこともたくさんあります。

 しかし、より多くの人がお互いに助け合うことによって、それらの制約や限界は克服されるため、大きな目的を達成することができるのです。大きな目的を達成するということは、それだけ大きな仕事ができることを意味しています。

 つまり、私たちが日頃何気なく仕事をしており、かつ、より大きな目的を達成しようとするという意味での組織的活動が、結果的に組織不正の影響を大きなものにするということが十分にありうるということなのです。

 不正をしようとしていないからこそ、私たちは個人としても、組織としても成長しようと純粋に仕事を行っています。成長しようとすることがかえって知らず知らずのうちに組織がもたらす影響力を高めるものとなっているとすれば、それは悲劇的なことなのかもしれません。ただ、実際に起きている組織不正には、こういった事例も少なからずあり、だからこそ組織不正がより大きなものになっていると言わざるを得ないのです。