アンカットダイヤモンドは100万円前後で1カラットの良質なものが、50万円前後で0.7カラットの良質なものが手に入ります。私も1カラットの正八面体のアンカットダイヤモンドをルネッサンス期の指輪のスタイルに仕立て、この10年間、外出するときには必ずプラチナのエファシスリング(八角形の指輪)と重ねづけをして楽しんでいます。形の整った10カラットを超えるような大粒のダイヤモンドは稀です。

 宝石種が何であれ、宝石は「バランス」が大事です。「構想」がよく考えられていて、「素材(石)」と「仕立て」に納得できる、美しいと感じられるものを買っておけば、まず失敗はありません。

男性におすすめの宝石は
「アンカットダイヤモンド」

アンカットダイヤモンド同書より転載

 最後に、男性におすすめしたい宝石をご紹介したいと思います。といっても、スーツ離れが進む今の時代、タイピンではありません。

 男性にこそ身に着けてほしい宝石、それは前節で100万円以上の予算で買うべき宝石の1つとして推奨したアンカットダイヤモンドです。

 アンカットダイヤモンドは、カットや研磨を施していない、地球が何億年も前に生成したままのダイヤモンドです。ダイヤモンドは炭素の結晶体であり、結晶体は正八面体の姿をしています。

 しかし、地中奥深くから地上に押し上げられる際、熱や圧力の低下によって表面が溶けたりした結果、上の写真に見られるように、稜線が若干丸みを帯びる、トライゴンが残るなど、さまざまに変形します。このように奇跡的に正八面体に近い形状を保っているものは、産出するダイヤモンドのごく一部です。

 そんな貴重な八面体のダイヤモンドでも、通常はカットや研磨をして「キラキラ輝くダイヤモンド」に加工します。よくよく考えてみれば、それほど奇跡的な貴石に手を加えてしまうのは、非常にもったいないことなのですが……。