職位が上がるほど必要になる
メンバーを「巻き込む」スキル

 職位が上がり、大きな組織を担って多様なメンバーを擁するようになればなるほど必要性が高まるのが、メンバーを巻き込むスキルだ。

 環境変化が加速し、メンバーや顧客の多様化が一気に進む中、トップダウンで行う一律の指示や命令の効き目は、著しく低下している。一方で、ボトムアップの「巻き込み型リーダーシップ」を発揮できるかどうかが、大組織を成功に導く上での重要な鍵となった。

 巻き込み型リーダーシップを発揮するためには、対話や会議の冒頭で「巻き込み5質問」を繰り出すことが役に立つ。以下の表に示した通り、指示や命令をしないで、まずは「やってみてどうだったか」を虚心坦懐に聞くことから始める。

 次に、「うまくいったこと」を聞いてメンバーの意欲を高める。さらに、ダメ出しをするためでなく支援するために、「うまくいかなかったこと」「壁に直面したこと」を共有してもらう。

 さらに、「改善したいこと」「改善していること」も、メンバーの口から語ってもらい、リーダーに「サポートを得たいこと」をメンバーから聞いて、一部でも良いのでサポートを約束してやりとりを終えるプロセスだ。

 その上で、指示、命令したいことを伝えれば、指示、命令の腹落ち度合いが格段に上がる。既に5質問でメンバーの意欲は高まり、巻き込みができているからだ。

 この巻き込み5質問の発揮力が、ぼんやり顔の人は極めて高い。そして、鋭くて優秀な人は5質問を完結できずに、途中で頓挫してしまいやすいのだ。

ボトムアップ型リーダーシップに
鋭さは無用である

 巻き込み5質問では、リーダーが質問し、メンバーが答え、メンバーが答えた内容にリーダーがポジティブにリアクションする「だけ」でいい。むしろ、それが重要だ。メンバーの答えた内容に、「なぜそう思うのだ」「どういう状況だったのだ」と追究したり、「そうじゃないだろう」「ああしたら良い」などと指示、命令したりしてはならない。

 途中で、「なぜそう思うのだ」「どういう状況だったのだ」と口を挟んでしまったら、リーダーにはその気が全くなくても、メンバーに対して「リーダーは何かその点について追究したいのだな」という印象を色濃く与えてしまう。リーダーの追究色が、表情、目の色に出ただけでも、その途端に巻き込みの力は減速してしまうのだ。

 そして、鋭く、優秀なリーダーほど、質問の途中で追究したり、指示や命令をしたりして主張してしまうことが多い。