繰り返しになるが、5質問のやりとりの最中は、リーダーは質問するだけ、メンバーの答えにポジティブにリアクションするだけに徹底すべきだ。そうすることが巻き込み効果を高める。

 リーダーは自己主張せず、むしろ、ぼんやりとしたくらいの穏やかな表情で5質問を繰り出せば、メンバーには抵抗感を与えず、メンバーの発言を誘発し、巻き込みが加速される。巻き込み型リーダーシップには、鋭さは無用どころか、邪魔なのだ。

 鋭い表情は、相手に抵抗感を与える。アイコンタクトの秒数をコントロールして、メンバーや顧客を巻き込む演習プログラムを実施しているが、顔の彫りが深く、鋭さを感じさせる表情の人は、短めのアイコンタクトでも、相手に抵抗感を与えやすい。

 逆に、柔和な面差しで、穏やかな表情の人は、長めのアイコンタクトでも、相手に違和感を持たれない。持って生まれたものなので仕方がないと思うかもしれないが、自分の表情の特徴を理解していれば、印象をコントロールすることは可能だ。

 指示、命令によるトップダウンのマネジメントと、質問によるボトムアップの巻き込み型リーダーシップは、どちらが良くて、どちらが悪いというものではない。トップダウンで徹底したいときにはトップダウンを、ボトムアップで巻き込みたいときにはボトムアップを繰り出せば良い。

 ただし、トップダウンのマネジメントを発揮しているときには、決してボトムアップ手法を混在させてはならない。ボトムアップの巻き込み5質問のやりとりの最中は、トップダウンの気配をみじんも見せてはならない。

 職位が上がれば上がるほど、ボトムアップ型リーダーシップの重要度が高まる。ぼんやり顔のリーダーは、その優れた担い手だから、登用されるのだ。