生前贈与が税制改正でお得に!?「相続時精算課税制度」を使うべき4つの理由写真はイメージです Photo:PIXTA

今年5月、国税庁は2023年分の贈与税の確定申告状況について公表した。報道向けの発表資料によると、贈与税申告書の提出者は51万人に上り、前年よりも2.6%増加している。51万人のうち、申告納税額があった方は37万6000人と、こちらは前年比より0.9%減少している。同資料では、贈与税の課税方法についても公表しており、暦年課税を適用した人は46万1000人(前年比1.5%増)、相続時精算課税を適用した人は4万9000人(同13.3%増)となった。いずれの贈与方法も前年より伸びているが、特に注目すべきは「相続時精算課税制度」である。これまで「使いにくい」とも言われていた相続時精算課税制度だが、高い伸び率であり、今年は法改正もあったことから、さらに注目が高まっている。では、本制度を使うべき理由とはどのようなものだろうか。今回の記事では2024年最新版の情報に触れながら、相続時精算課税制度を使うべき4つの理由を紹介する。(税理士・岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)

2024年に法改正された 
相続時精算課税制度とは

 今年は「相続時精算課税制度」に法改正があったことはご存じだろうか。今回の改正により、新たに非課税枠が新設されたのだ。元々本制度は2500万円までの生前贈与なら贈与税がかからない(特別控除)しくみであり、贈与者が死亡した際に相続財産に持ち戻しをして、相続税計算を行うものである。なお、暦年贈与と併用することはできない。

 例として、母親が子に対して生前に本制度を使って2500万円の贈与を行い、母親の死去後に遺産が1億円あったと仮定しよう。この場合、2500万円を持ち戻して計算するため、相続税計算は1億2500万円が対象となる。本制度は贈与税を支払わなくてもよい代わりに、相続税が発生する可能性があるため注意が必要だ。

 また、「相続時精算課税制度」は誰でも利用できる制度ではない。対象者は次のように制限されている。

・贈与できる人(贈与者)は60歳以上の父母や祖父母
・贈与される人(受贈者)は18歳以上の子や孫

 また、本制度は使用を開始する場合、相続時精算課税制度に関する所定の書類を税務署に対して届け出る必要がある。

 法改正により、今後は年に110万円までの基礎控除が認められたため、「年間110万円」までの贈与なら贈与税もかからず、累計2500万円までの特別控除にも含む必要がない。以前よりも若干ではあるが、制度としてお得になったと言えるだろう。