相続時精算課税制度で
注意すべき意外な落とし穴

 魅力が多い相続時精算課税制度だが、暦年贈与に戻れない以外にも意外な落とし穴もある。まず、不動産の贈与時には税金への注意が必要だ。登録免許税と不動産取得税の負担がそれぞれ重くなる可能性がある。相続時よりも贈与時の方が税率は高いため、事前に税理士に相談し計算結果を見てから判断することもおすすめだ。小規模宅地等の特例も使えなくなるため、不動産の贈与は慎重に進めてほしい。

 また、本制度は孫へ贈与できる点が魅力だが、相続人ではない孫(代襲相続除く)は相続税が2割加算となる。

 今回は相続時精算課税制度について、2024年最新の情報を交えながら解説した。本制度は今後も利用率が伸びていくと思われるが、先述の通り、意外な落とし穴があることも忘れずに利用してほしい。

 相続時精算課税制度以外にも、相続税対策には遺言書や信託の活用なども考えられる。いずれの方法でも、相続開始後のトラブルを未然に防ぐために、家族で資産形成のゆくえについて話し合いをした上で制度利用を決めてほしい。特に高額の贈与は、もらえなかった方に「なぜ自分はもらえなかったのか」という禍根を残してしまうおそれがある。明るい相続を目指すためにも、贈与の段階から丁寧な話し合いを重ねておこう。