相続時精算課税制度を
使うべき「4つの理由」

 これまで利用が避けられてきた相続時精算課税制度だが、法改正後の今だからこそ知っておきたい「使うべき」4つの理由を紹介する。

 まず1つ目は「値上がりしそうな財産の贈与はお得」になるという点だ。本制度の活用で高額の贈与をしても、2500万円までは非課税となるほか、この金額を超えても贈与税の税率は一律20%しかかからない。暦年贈与は最大で55%の贈与税が発生するため、実は一気に行う高額贈与なら本制度の方がお得だ。相続時精算課税制度で贈与した財産は「贈与時の価額」で評価するため、将来的に値上がりする財産を贈与しておけば相続税対策にもつながる。

 2つ目は「高齢者の贈与に向いている」点だ。暦年贈与も法改正があり、これまで相続開始3年前までの贈与を相続財産に持ち戻しする必要があったが、今後7年へと段階的に延長される。高齢者にとっては病気などをきっかけに贈与を始めても、思うような相続税の節税効果が得られない可能性がある。高額の財産を贈与するなら、少しずつ暦年贈与するよりも、思いきって相続時精算課税制度を選択することも検討されたい。

 次に3つ目は「110万円の基礎控除の誕生」だ。これまでこのしくみが無かったため、たとえ少額であっても相続時精算課税制度を利用するなら贈与税申告が必要だった。しかし、110万円の基礎控除枠ができたことにより、この金額以下なら申告は不要である。以前よりも制度が使いやすくなったのだ。また、毎年110万円までの贈与は、相続時の持ち戻しの対象外となる点も注目したい。

 最後に4つ目は「相続トラブルを防ぐ効果がある」点である。相続人間で争う可能性がある財産を贈与であげたい人に渡してしまえば、遺産分割協議時に争いは起きにくくなる。遺言書を使う方法も考えられるが、1つ目に触れたように値上がりしそうな財産は早期に渡すことで相続税の節税効果も得られる。特に資産が多い方は、本制度の活用を検討してみてほしい。