水遊びで子どもが溺れた!→助けに行くと親も危険、夏休みの水難事故から生還するには?【専門家が解説】2021年5月に水難事故が起きた丸亀市のため池。水を抜く前(写真上a)と水を抜いた後(写真下b)では、同じ地点(黄色い丸印)の見え方が異なる。水がある状態では、深さを見誤ってしまう可能性があることがよく分かる 提供=水難学会
水遊びで子どもが溺れた!→助けに行くと親も危険、夏休みの水難事故から生還するには?【専門家が解説】提供=水難学会

のり面に傾斜がある「ため池」は
大人でも這い上がるのが難しい

 ため池は、池の縁から中心部に向かってのり面に傾斜がついている構造のものも多い。そうなると、ため池に落ちてから這い上がることすら不可能だったりする。

 というのも、水中にある斜面にコケや藻が生えていると、底にゴムが付いた運動靴を履いていたとしてもつるつる滑ってしまい、ひざに力を入れることができず立ち上がれない。これは大人でも同じだ。

 ではため池に落ちたときはどうすれば助かるのか。

 水難学会の木村隆彦会長(明治国際医療大学教授)によると、「上がれない前提で、背浮きをして助けが来るのを待つ」のが誰にでもできる正解だ。泳ぎが得意ではない人は、縁までわずか1メートルの距離でも近づくことができない。仰向けになって手足をじたばた動かさず、呼吸を止めて「浮く」ことに意識を集中させよう。

 泳ぎが得意で余裕のある人は、自力での移動を試みてもいいだろう。ゆっくりとしたキックで水際に移動し、上陸せずに水の中で救助されるまで待機しよう。もし水際で、のり面の一部にでこぼこした加工が施されている“上陸ポイント”を見つけられたとしたら、上陸できるかもしれない。この時、背浮き状態から起き上がろうとして、沈水する危険があるため、絶対に無理をしてはいけない。

「低年齢のきょうだいがいる家族」は特に危険
水遊びスポットとグッズ選びにもポイント

 続いて、家族で水辺に出掛ける際の注意点も紹介する。

 子どもが複数いて「低年齢のきょうだいがいる家族」は特に慎重になってほしい。親の目が下の子に集中している瞬間が必ずあるからだ。

 例えば5歳と2歳の子どもの場合、親が下の子の着替えを手伝っている間に上の子が待ちきれず、一人で先に水辺に向かってしまうのはよくある話。旅行で遠方に出掛けると、子どもたちはテンションが高く、親は準備や出発の時点ですでに疲れ始めている……という経験がないだろうか。そもそも事故が起きやすい状況になっていることを念頭に置いておこう。

 水遊びの「場所」「グッズ」の選び方にもポイントがある。水深が「子ども自身のひざよりも下」の場所を選ぶようにしよう。

 また、救命胴衣を着けることで安全対策をする人が増えてきたが、遊ぶ場所と救命胴衣の付け方やサイズ選びにも注意が必要だ。市販の救命胴衣は、2~3歳の子に合うものが少ない。お下がりなどで、大きめのものを着せると脱げてしまい、本来の力が発揮できないこともある。

 さらに水難事故の専門家たちは、特に低年齢の水遊びについて「救命胴衣を『着けよう』と言っているが、『着て泳ごう』とは言っていない」(木村氏)。救命胴衣を“着せておけば安心”というのは誤りなのだ。

 目の前で子どもが溺れた場合、親は自分で何とかしようと助けに行く。しかしスキルがなく、共に溺れてしまうケースがある。この場合、親が子どもを助けに行って、助け上げるのではなく「子どもと一緒に背浮きして待つ」のが親子の命を救うベターな選択肢。背浮きしながら足のキックを使って移動し、親子で岸辺に近づいていけたらベストである。

 子どもだけでいるときに水に落ちた際の助かり方も紹介する。