人が水に落ちたとき
通報のタイミング

 まず、自分を含めた目撃者が複数いる場合は、以下のフローになる。

●水に落ちた人が話を聞ける状態のとき

(1)水に落ちた人を見かける

(2)落ちた人の近くに浮き具を投げ入れ、それをキャッチして掴まってもらう

 空のペットボトルや、空気を入れて口を縛ったポリ袋、荷物が詰まったリュックなどが即席の浮き具になる。

 さらに可能であれば、<息を止めて上半身をバタバタ動かさず、「背浮き」をするよう、陸上から一方的に指示をする>。背浮き中の人が会話しようとすると溺れてしまうため、「会話」を続けようとしてはいけない。

(3)落ちた人が沈んでいかないのを確認して、「119番」に通報する

●水に落ちた人が話を聞けない状態のとき

(1)水に落ちた人を見かける

(2)落ちた人が短時間も浮いていられない。ジタバタしながらあっぷあっぷと溺れたり、意識が途切れたりして沈んでいる

(3)「119番」に通報しながら浮き具を投げるか、
   身近に浮き具があれば投げ入れて、すぐに「119番」に通報する

 浮き具を探すことを優先して、119番への通報が遅れてはいけない。

 ここで、その場にいるのが子どもだけで通報できない状況ならば、大人を探して現場に連れていきながら、119番に通報をする。よくある判断ミスとして、連れてこられた人が何とかしようと救助活動にのめり込んでしまい、通報が後手に回るケースがある。

 日本では、消防が約10分で現場に駆けつけてくれる。水難事故の専門家である木村氏は、「この10分間を浮いて待つために、何ができるか考えて努力することが大切」と語る。

●自分が水に落ちて目撃者が誰もいない場合

・背浮きを駆使して、浮いたまま誰かに見つけてもらうまで待つもしくは、
・浮いたまま、足をキックして岸辺や縁まで移動し、自力で這い上がるしか、助かる確率を上げる方法はない。

 通報先で迷うこともあるだろう。海岸から離れた海上でない限りは「まずは119番」と覚えておくといい。

 海上での事件・事故は「118番(海上保安庁緊急通報用電話番号)」と啓発されている。とはいえ、車で救助に迎える場所であれば119番の消防のほうがカバーできる拠点が多く、移動も早い場合が多い。また、必要に応じて消防も警察も海上保安庁も連携している。

 数々の水難事故を研究し、対策を考え続けてきた木村氏は「浮き方を知らない人が助けに飛び込んでも奇跡は起きない」と断じる。水難事故と聞くと「さっと飛び込み、泳いでいって救助する」ような姿が簡単にイメージされるが、これは幻想だ。