「和歌山毒物カレー事件」は冤罪なのか?カメラがとらえた“杜撰な捜査”の実態林眞須美が収監されている大阪拘置所 (C)2024digTV

発生から26年目となる現在も、ネットでさまざまな考察が飛び交う「和歌山毒物カレー事件」。直接的な証拠や動機の確定もなく、状況証拠の積み重ねで有罪が立証された同事件だが、ドキュメンタリー映画『マミー』(https://mommy-movie.jp/)では、監督の二村真弘さんがその証拠とされた目撃証言や科学鑑定を検証し、杜撰な捜査の実態、さらにはメディアの問題点をも浮き彫りにする。「そもそも林眞須美さんの冤罪(えんざい)を前提で取材をしていなかった」という二村監督は今、何を思うのか。(文中敬称略)(編集者/ライター 西野谷咲歩)

「上からストップがかかった」
断られ続けたテレビ放送

「和歌山カレー事件」は、多くの人にとって過去の「終わった事件」だろう。一方で、林眞須美(63)の冤罪の可能性を指摘する書籍や記事は少なくない。同事件に着想を得たと噂される日本の漫画、映画やドラマも存在する。今年放送されたTBSテレビの日曜劇場『アンチヒーロー』を見て、“横領をしたのは事実だが殺人は犯していない”緒形直人演じる冤罪の死刑囚が、林眞須美をモデルにしていると感じたのは、著者だけではないはずだ。

「和歌山毒物カレー事件」は冤罪なのか?カメラがとらえた“杜撰な捜査”の実態ドキュメンタリー映画『マミー』 (C)2024digTV

 現在も関心を持ち続けている人がいる事件だということもあり、『マミー』は公開前からSNSを中心に話題になっている。評判が口コミで広がる中、映画に登場する林眞須美の長男、林浩次(仮名)は、X(旧ツイッター)に、「味わった事のない角度からの辛辣な意見や指摘、怪文書が届く、個人情報に触れられる…」と投稿し、一時は公開中止を配給会社に願い出た。

「判決文の中では、お子さんが亡くなった情景も書かれていて、そういう遺族の思いを知った上で母親を信じるのってちょっと生半可にできるような発言ではない。その覚悟をもった上で、改めて自分の記憶と照らし合わせた時に、絶対に母親がやっているとは言えないという結論に至って、事実はどうだったのか…」

 浩次は映画で複雑な思いを吐露する。『マミー』を観た後では、この言葉の解像度が高まり、「和歌山カレー事件」に対するイメージも大きく覆されるかもしれない。