総務省の有識者委員会は16日、インターネットの偽情報に対する法的な整備に向けた素案をまとめた。最近、著名人などになりすました投資詐欺被害が急増しているため、ネット広告の事前審査を厳格化し、削除の方法なども定めている。投資詐欺を巡っては政府が6月、犯罪対策閣僚会議で総合対策を決定したが、交流サイト(SNS)運営者の自主的な対応に委ねる内容にとどまり、実効性が疑問視されていた。このため総務省が法的な制度作りの準備を進め、早ければ来年の通常国会でプロバイダー責任制限法改正を目指す。(事件ジャーナリスト 戸田一法)
今年1~5月の
被害総額は約430億円
投資詐欺の手口はいたってシンプル。フェイスブック(FB)などSNSのバナー広告に投資家や著名人を名乗って「無料の投資教室に案内する」などとかたり、ライン(LINE)グループを偽装したアカウントに誘導。暗号資産や株、先物取引などへの投資名目で現金をだまし取るのが共通点だ。
警察庁によると、全国の警察が今年1~5月に認知した同種の詐欺は3049件、被害総額は約430億円。昨年の被害総額は約278億円で、今年は4月の時点で既に約334億円と昨年1年間を上回っていた。
なりすましの肩書で最も多かったのは「投資家」で35%、次いで「その他著名人」で19%。「会社員」「芸術・芸能関係」もいたという。生成人工知能(AI)の技術で画像や音声が精巧になっており、偽物と見抜くのは困難だ。
明らかになっているなりすましの被害者は、衣料品販売大手ZOZO創業者の前澤友作さん、ジャーナリストの池上彰さん、実業家の堀江貴文さん、経済アナリストの森永卓郎さん、経済評論家の荻原博子さん、「2ちゃんねる」開設者の西村博之さん、旧村上ファンド代表の村上世彰さん、将棋のプロ棋士で投資家の桐谷広人さんら。