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 たとえば取引先の接待で、二軒目へ行く場合です。一軒目の食事は会社宛ての領収書を貰って、二軒目のガールズバーは「僕が払っときますから」と言って領収書を取らないところを見せれば、信頼関係が増進します。相手は、仕事上の付き合いから個人的な付き合いに変わったと思ってくれるからです。

 その出費の分を、彼女と飲みに行った先で領収書をもらって付け替えるなんて、ごく普通にやることでしょう。厳密に言えば業務上横領に当たりますが、会社の経理だって了解済みで、度が過ぎなければ目をつぶっているものです。それと同じことを、政治家はやってきたんです。

仕事ができる人に共通する“グレーな領収書の切り方”、佐藤優が語る「水がキレイすぎても魚は死ぬ」連載:「派閥とカネと自民党総裁選」に登場する大物政治家たち Photo by Wataru Mukai

 クリーンに見える政治家には、2通りいます。非常に強い意志を持ってクリーンを貫いている有力な政治家と、全く力がないために金を集められない政治家です。

 このご時世でこうした話をすると顰蹙(ひんしゅく)を買うのですが、水が澄みすぎていると魚は生きていけません。しかし水があまりに濁っていても、魚は死んでしまいます。本来ほどよい頃合いがあるのに、昨今はキレイな社会が好まれるし、経済が良くないせいで贅沢をしているように見える人間は白眼視されるんです。

――いまは現金を配るのではなく、飲み食いなんですね。

 そう思います。カネを配って買収などという懲役刑になるリスクのある工作に踏み込む政治家はあまりいないと思います。選挙を勝つためには、一生懸命に働いてくれる人が必要です。その人たちを大切にしていることを示すには、飲ませて食わせることです。政治はハレの世界だから、特別感を伴わなければいけません。するとあっという間に、飲み食いだけで年に1000万円くらい飛んでいきます。