「政治とカネ」の真相に迫る。企業献金禁止論や派閥解体で揺れる自民党。そもそも企業献金が始まった歴史的背景とは何か。岸田首相の「ドライすぎる派閥論」と菅元首相の「無派閥の苦悩」、直近2人の首相とって派閥はどんな意味を持っているのか。政治不信の根源に、政治学者・御厨貴氏が鋭くメスを入れる。(取材・文/ライター 田之上 信)
企業献金の背景に
資本主義と社会主義の対決
――派閥の裏金事件に関しては、本書でも渡辺氏は財界と政界のつながりを指摘しています。「政界を腐敗させた責任の半分は財界にあるのではないかと思う」とし、「献金」と「利権」について書いています。
企業献金の問題は、渡辺さんが言うように献金を受ける側も問題だけど、出すほうもどうなのということがあります。
いまもおカネを出しているのは基本的に古いタイプの企業、つまりこれまで日本を支えてきた経団連を中心とするような大企業です。
最新のIT企業など、これからの日本、あるいはこれからの世界をつくっていくような企業体がお金を出しているとは到底思えませんからね。
――なるほど、確かにそうですね。
だって企業献金して何かいいことありますかと。自民党におカネを出して見返りが得られるとはあまり考えられない。
むしろ、そんなことをしてメディアに暴かれたりすると企業にとってマイナスイメージになりますから、まず出さないと思いますよ。
――国会でいま政治資金規正法の改正が進められていますが、この問題を解決するためには企業献金そのものを禁止にすればいいのではないでしょうか。
そうだろうと思います。献金そのものをなくす。つまり、企業側がカネを出して何かを頼むという関係そのものを止めない限りは、やっぱりおカネの問題はずっと政治について回ると思います。