9浪はまいが見た
「生徒と予備校講師の対立」とは?

 私はかつて、家族の事情などで集中して勉強するのが難しい環境にいました。そこから仮面浪人を経験したり、社会人生活と並行して受験勉強を重ねたりする中で、難関大学合格への熱意が高まりました。そして9浪を経て、念願叶って早大に合格しました。

 私が最後(9浪目)に通った予備校では、私よりも偏差値が高く、早大に合格する可能性も高いとされていた浪人生がたくさんいました。予備校はテストを行うたびに順位が貼り出される仕組みだったため、私はいつも彼らの実力を目の当たりにし、「この人たちに勝たなければ早稲田に行けない」と必死になって勉強したものです。

 しかし、私よりも学力が高かった浪人生の中に、その年の入試本番(一般受験)で早大に合格した人は誰もいませんでした。一因として考えられるのは、生徒と予備校講師の間に対立があったことです。

 その予備校は、全国で早大合格者を多数輩出しており、実績に基づく確固たるノウハウを持っていました。一例を挙げると、先生方は早大に合格するための「勉強時間の黄金比率」として、「英語5:選択科目3:国語2」という割合をおすすめしていました。

 まれに例外があり、英語が得意で国語が苦手な生徒に「英語4:選択科目3:国語3」といった割合を提案することもありましたが、基本的には「黄金比率」を大きく動かすことはしませんでした。過去のOB・OGも、そのやり方で受かっている人が大多数だったからです。

 ですが、私と同時期に予備校に通っていた浪人生の多くは、この「黄金比率」をなぜか無視し、自己流で受験勉強を進めていました。さらに、生徒同士で英語の成績を競うことが流行し、友人に打ち勝とうと、英語だけを1日7時間以上勉強し続ける人までいました。

 確かに英語は早大入試の最重要科目なのですが、こうした対策は「バランスよく勉強しよう」という先生のアドバイスに反するものでした。結果、予備校講師と生徒の溝が深まり、先生と生徒の「揉めごと」に発展したこともありました。

 そして蓋を開けてみると、「黄金比率」を無視した生徒たちは、選択科目や国語の対策不足が原因で早大に落ちてしまったのです。