たびたびニュースになるカラス被害。対処法の定番であるカカシやCDは効果的なのか?カラス研究20年、カラスの生態もカラス被害の現場も知り尽くした著者がカラス対策の真相を語る。※本稿は、塚原直樹『ヒトとカラスの知恵比べ 生理・生態から考えたカラス対策マニュアル』(化学同人)の一部を抜粋・編集したものです。
カラス対策の定番とされる
「カカシ」に効果はあるのか
私の造語の「カカシ効果」を紹介したい。
古くから行なわれている野生鳥獣対策というと、カカシが有名だ(図2-1)。カカシとは、ヒトを模した人形を畑などに置くことで、野生鳥獣に対し、ヒトがいると思わせる対策である。カカシのデザインもさまざまだが、ときに、じつにリアルなカカシを目撃し、びっくりすることもある。しかし、カラスはカカシをヒトとは思っていないだろう。では、カラスはカカシをどう思っているのか?ここでカラスの気持ちになって考えてみよう。
餌場として毎日通っていた畑。昨日までは何もなかったが、今日は何か変なものがある。よくわからないが、危険なものかもしれない。とりあえず警戒して近づかないでおこう。今日はこの畑はやめて別の餌場に向かおう。
カカシをはじめて目撃したカラスは、きっとそう思うはずだ。カラスは警戒心が強い動物である。また餌場はいくつもあるのだから、あえて危険を冒してまで、同じ餌場にこだわる必要もない。念のためと用心し、近づかなくなるのだ。
しかし、カラスにも個性があり、警戒心の程度はさまざまだ。とくに経験の少ないヒナなどの警戒心は薄い。カカシのそばに無用心に近づくカラスもいるだろう。それを見た別のカラスは、カカシは危険なものではないと判断する。そうなると、もうカカシの効果はなくなってしまう。
このカカシのように、目新しい物にカラスが警戒し、一時的に近づかなくなる効果を、私は「カカシ効果」と呼んでいる。多くの既存の対策製品に現れる一時的な効果は、この「カカシ効果」なのだ。
なお、場所や季節など環境によって効果に差は出る。食べ物が極端に少なくなる冬に、栄養価の高い魅力的な食べ物があれば、多少の危険を冒しても食べ物を確保しようとするだろう。そのような場合、カカシはまったく役に立たないはずだ。逆に、昆虫や木の実など自然の食べ物が溢れる夏などであれば、カカシも十分に効果を発揮するに違いない。
CDを吊るしておくのは
カカシ以上の効果がある?
カカシ以外にも、畑では吊るされたCDをよく目撃する。このCDの効果はいかに?これも「カカシ効果」が発揮される。しかし、カカシよりも効果が高い可能性がある。科学的に比較したデータがあるわけではないが、その理由は次のとおりだ。