カラスは紫外線を認識できる。われわれには見えない紫外線を見ることができるのだ。しかし、見えるからといって、嫌がるわけではない。むしろ、物を識別するうえで、紫外線反射が重要だということがわかっている。われわれは、過去にこんな実験を行なっている。

 ハムとハムの食品サンプルを用意し、いくつかの光条件下でカラスに選ばせた。屋外の太陽光下で実験を行なうと、お腹をすかせたカラスは、ほぼハムを選ぶ。しかし、屋内の紫外線がほぼない光条件下で実験を行なうと、ハムを選んだ割合は50パーセントになってしまった。つまり当てずっぽうである。

 どうやら、カラスは紫外線反射がないと、本物のハムと食品サンプルの見分けがつかなくなってしまうらしい。また、実験に使用したハムと食品サンプルの光反射の違いを測定すると、紫外線領域の光の反射が異なっていることがわかった。この実験から、カラスが物を識別する際は紫外線の反射が重要な要素であることが推測された。

 さて、カラスが紫外線を認識できることに着目した対策製品が販売されている。ある製品は、紫外線を反射することでカラスは眩しく感じ、近づかなくなるという。

 この製品がどの程度紫外線を反射するのかは不明だが、鏡面以上に太陽光を反射することは考えにくい。この製品の理屈であれば、鏡面にカラスは近づかないという話になる。

 しかし、日差しが強烈な初夏でも、鏡のような窓があるビルにもカラスが平気で止まっているところはよく目撃される。また、私が行なった実験で、強烈な紫外線を発する紫外線ランプを餌の前に置いた際も、紫外線ランプをまったく気にせず餌を食べていた。

 だが、この製品を使用すると、カラスが一時的に来なくなるとのこと。それはなぜか?やはり、目新しい物に対する「カカシ効果」と考えたほうが納得できる。製品が紫外線を反射することは事実だろうから、紫外線に対し感度が高いカラスには、その製品が目立つ存在なのかもしれない。何か怪しい物があるから、ひとまず近づかないでおこうとカラスは考えるのだろう。

 なお、この製品がうたうように、反射した紫外線をカラスが嫌がるという理屈ならば、CDの裏面も紫外線をよく反射するので、CDを吊るすのも同等、もしくはそれ以上の効果が期待できるということになる。