新日本酒紀行「富士山」酒蔵外観 Photo by Yohko Yamamoto

登録商標「富士山」を醸す、人里離れた老舗蔵の地酒

 富士山頂剣が峰まで17キロメートル、標高約300メートルの地で、日本酒「富士山」を醸す牧野酒造。目の前は田んぼで、背後に雄大な富士山がそびえる、1743年創業の老舗蔵だ。「Mt.Fuji」や「富士の巻狩り」など、昔から商品名に富士を使い、その実績から「1987年に商標として富士山が登録できました」と9代目の牧野利一さん。

 古くは駿河国上野郷と呼ばれた地域で、ここから見る富士山は、最高峰剣が峰を中心に左右対称で「宝永山や大沢崩れも目立たず、最も美しい富士山だと思います」とも。穀倉地帯で、富士おろしと呼ばれる冷気が吹いて、冬はグッと気温が下がり、酒造りの適地だ。