鎌倉時代中期、上野郷の名地頭、南条時光は、日蓮正宗総本山大石寺を立ち上げた。その時光の元で穀物商を始めたのが牧野家の先祖で、その後、酒造業を開始。自社田4反に加え「酒造りには三つの山が必要。桶おけ樽たるのための杉山、タガに使う竹林、燃料用の雑木林です」と山林を管理する。「地方の杜氏集団による酒造りを守りたい」と毎冬、能登から杜氏と副杜氏を招き酒造りを行う。2024年元日に発生した能登半島地震では杜氏の自宅が被災し、震災支援会を開催した。

 目指す酒は、富士山らしさを感じる酒だ。「富士山は、霊験あらたかでダイナミック。何度見ても、いつ見ても見飽きることはありません」。富士山の麓で思いを込めて醸す酒は、出しゃばらず食事に寄り添う、飲み飽きない自然体の地酒だ。

新日本酒紀行「富士山」純米吟醸 富士山
●牧野酒造・静岡県富士宮市下条1037●代表銘柄:純米大吟醸 富士山、純米酒 富士山アート、本醸造 富士の巻狩り、白糸 鼓●杜氏:大場幸松●主要な米の品種:五百万石、誉富士、山田錦
新日本酒紀行「富士山」「富士山」の旗 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「富士山」前掛 Photo by Y.Y.