来年は、昭和改元から100年目を迎えるという。日本を世界第2位の経済大国に成長させた昭和は、確かにいい時代だったと思う。でも、99年目となる今、その価値観は必ずしも時代に合うとはいえなくなってきているのは確かだ。日本をその時代の価値観から解き放って、前進させることが私たちの役目なのだと思う。

 冒頭の「キャリアか子どもか」の質問だけれど、いろんな考えがあるし、体験は人それぞれだから、ここからは私の感想だと思って読んでほしい。

 正直に言えば、キャリアと子ども、両方を100%手に入れることはむずかしい。私は常に「何かを得るには、何かを失う」と自分に言い聞かせてここまで歩いてきた。だってそれが揺るぎない事実だったから。

 キャリアの頂点にいたとしても、「冨永さんが妊娠したので、ドラマの撮影を1年先に延ばしましょう」なんて、超大女優にならないかぎりありえない。

 仕事の現実は、きれいごとや、理想論ではすまされないのだ。

子どもを産むことを諦めないで!
仕事で失ったものは取り戻せる

 それでも私は、キャリアを一度ストップして出産を選んだことを後悔したことは微塵もない。私の幸せを考えたとき、息子の存在は不可欠だったから。

 あくまで私の場合だけれど、子どもを産み、育てなければここまで成長できなかったし、考えも浅いままだったと思う。私は子どもに育ててもらったのだ。

 そしてもうひとつ言わせてもらうと、妊娠と出産は本当に不思議な体験だった。言葉が見つからなくてもどかしいのだけれど、自分の体の中に宇宙を感じたのだ。

 いままでこの世界にまったく存在しなかった命が生まれるという不思議。

 自分の中の卵子と、何億という精子の中のたったひとつが結合して、細胞分裂を繰り返し、人類の進化をたどるように成長して、オギャーと生まれる。

 なに?私の体ってこんなことできるの?すごくない?本当に驚いた。

 生まれて数年もすれば一人前みたいな口をきいて、自分はこの世界にずっといたかのような顔をする。すごいなぁ、生命ってすごいって何度思ったかわからない。