カスハラ写真はイメージです Photo:PIXTA

不当な要求を相手に強いるハードクレーム。その対応は、通常のクレームとは異なり、スタッフの安全確保、チームプレー、組織方針の順守が重要だ。適切な対応で不当な要求を拒否し、孤立させない体制を築こう。本記事では、ハードクレーム対応時に必要な3つの心構えを詳しく解説する。※本稿は、津田卓也氏『カスハラ、悪意クレームなど ハードクレームから従業員・組織を守る本』(あさ出版)の一部を抜粋・編集したものです。

お客様対応とは次元が異なる
ハードクレームへの心構え

 ハードクレームとは、悪意・特殊クレームを含み、「一般クレームとは性質の異なるもの」と定義してください。

 多くは「不当要求行為」と言い換えられ、相手の要求内容や手段が、常識的な範囲を超えてしまったクレームのことを指します。

 また、近年問題となっているカスハラもここに含まれます。正当な要求から出た一般クレームと同じ対応では解決しないので、特別な対策を講じる必要があります。

 ここで注意したいのは、一般クレームも、相手との関係がこじれてしまえば、ハードクレームになってしまう可能性もあるという点です。

 初期対応が上手くなかったからといって、相手が激高して手を出してきたり、怒鳴られ続けたりするような状態は、もはや一般クレームとは呼べません。

 不手際をお詫びし、解決の手段として代替案を提示してもご納得されず、常識的な範囲を超える相手の言動によって事態が一向に解決に向かわない場合は、「お客様対応モード」を切り上げて、「ハードクレーム対応モード」で臨むことが必要です。

図表:クレーム対応モード一覧同書より転載 拡大画像表示
図表:初期対応のミスがハードクレームを招くこともある同書より転載 拡大画像表示

 ここからは、ハードクレーム対応時に重要となる3つの心構えについて解説していきます。

(1)自分を守る
(2)スタッフを孤立させない
(3)組織の方針・ルールに沿って行動する

 一般クレームとハードクレームの対応時にスタッフが意識しておくべき最も大きな違いは、「ハードクレームでは“NO”と言っていい」ということです。

ハードクレーム対応の心構え(1)
自分を守る

 これは文字通り、対応しているスタッフが自分自身で安全を確保するという意味です。その上で、必ず守っていただきたいことがあります。

 まず、相手と2人きりになってはいけません。

 窓口にお客様が来て大声で怒鳴っているなど、周囲のお客様に迷惑が掛かると判断した場合、他のお客様の目に触れない場所に移動することになるでしょう。

 つまり、多くの人から死角になる場所、もしくは、会議室や応接室などのような閉鎖された場所に移動するはずです。お怒りになっていて冷静とは言えない相手とそんな場所で2人きりになってしまっては、何が起こるか分からず、危険です。

 自身の安全を考えて必ず別のスタッフを伴って、複数で対応してください。