物価高対策給付金を巡り
利用客からの感情的な電話
物価高騰が世間で騒がれている。なんとか物価を上げたい、これこそが長期にわたる政府の悲願だった。長く続いた景気浮揚策はことごとくうまくいかず、日銀は景気刺激を目的にゼロ金利、さらにはマイナス金利まで持ち出し、物価が上昇するのをひたすら待った。
しかし、実質的に物価を引き上げたのは、コロナ禍における物流の混乱が招いた輸送コストの上昇、ロシアによるウクライナ侵攻が引き金となった原油価格の高騰と、主に外部要因であり、予期せぬ地政学的イベントだった。金融政策などほとんど役に立たないどころか、今やその副作用に悩んでいる。
そのような中、金をばらまけば庶民、つまり有権者の支持を得られると、与党も野党も声高に物価高騰対策の給付金の重要性を叫んだ。現金を支給すれば助かる人もいるだろうが、私にはその効果がはっきりとは分からないところが多い。
銀行の支店に勤務する私が一番関わる場面は、その給付金が振り込まれてくる預金口座について、利用客から問い合わせを受けるところだ。
「ちょっと調べてほしいんだけど」
こういった電話は、前置きもなければ名を名乗ることもないことが多い。
「はい、いかがされましたか?」
「『いかが?』って、何言ってんのよ!」
電話の相手は女性の声。高齢者ではない。キンキン声でかなり感情的になっている。
「何かご迷惑をおかけしていますでしょうか?」
「はい、迷惑です!私の給付金、いつ入金してくれるの?」