また、不当な要求を押し付けてくる相手に対しては、毅然とした態度で“NO”と言いましょう。「自分を守る」には、心の安全も含まれています。

 クレーム対応の姿勢として、相手の怒りが収まるまで、真摯に話に耳を傾けるのは大事です。ただし、正当な要求があるわけでもなく、「ただ誰かに文句を言いたい」という特殊クレームのケースでは、話を聞き続けたからといって解決には至りません。それどころか、心ない言葉で攻撃し、スタッフの心を傷つけるだけといった事態にもなりかねません。

 自分の心を守るため、お客様対応を切り上げるという選択肢を持っていいのです。

ハードクレーム対応の心構え(2)
スタッフを孤立させない

「クレーム対応が上手くいかないのは従業員のスキルの問題である」と長らく思われてきたこともあり、現場スタッフが1人で問題を抱え込み、孤立してしまう場合があります。

 以前、コンサルをした企業でのお話です。

 コールセンターにお客様が電話を掛けてきました。弁護士だと言うお客様は、法律的なことをくどくどと話し、対応したスタッフのB子さんに執拗に質問をしてきました。お客様の質問に渋々答えていると、そのお客様がB子さんの言葉のミスを指摘してきました。

「今、君、間違ったよね」
「申し訳ございません」
「間違ったことを言ったよね?」

 間違ったことは事実なのでB子さんは真摯に謝罪しましたが、お客様は許してくれません。そのときは1時間くらいで電話対応を終えたのですが、翌日から毎日のようにそのお客様は電話を掛けてこられ、B子さんを名指しで呼び出し、

「この前間違ったことを言ったよね。認めるよね」
「はい」
「認めたよね。君、どう責任をとるの?」
「どうすればよろしいでしょうか?」
「そんなことは自分で考えなさいよ。どう責任をとるのかと聞いているんだ」

 と、執拗に責め立てます。

 何度も詰め寄られたB子さんはある日、電話口で泣き出してしまいました。そのとき、対応を隣で聞いていたベテランのスタッフC子さんが筆談で内容を聞き出し、電話を替わってくれたのです。そして、お客様にはっきりとした口調でこう伝えました。