コロナ禍前より混雑している路線はある?
【番外編】輸送人員が伸びた路線ランキング

 首都圏の鉄道路線の多くは、コロナ禍で激減した通勤通学需要が回復傾向にある。ところで、「乗客数がコロナ禍前を上回った」路線はあるのだろうか?ピーク時1時間当たりの乗客数を19年度と23年度で比べてみよう。

 乗客数が増加したのは6路線、95%以上を確保したのは4路線あった。輸送人員伸び率105%の横浜シーサイドラインは、金沢八景駅が移転したこと、京急へのアクセスが改善したことが挙げられる。また、同101%の江ノ島電鉄は、観光需要の急回復、インバウンドの急増という特別な事情がある。

 続いて、同104%の東京メトロ南北線に着目したい。南北線と直通運転を行う埼玉高速鉄道も健闘しているからだ(同94%)。玉高速鉄道は各駅の利用者ベースで確認しても直近2年間で1~2割ほど伸びており、長らく進まなかった沿線開発が、ようやく進み始めた結果と推測できる。ただし、南北線は車両の8両編成化によってピーク時の輸送力・定員が2割ほど増え、その関係で混雑率の上昇は前年比6%増(23年度は146%)にとどまっている。

 他方、東西線と共に痛勤ラッシュの象徴でもあった、東急田園都市線や東急東横線は、コロナ禍前と比較してピーク時の利用が6~7割程度にとどまっている。コロナ禍をきっかけに、首都圏の通勤事情は確実に様変わりしたと言えるだろう。定員が少なく、乗客の増加を受け止めきれない鉄道(日暮里・舎人ライナーや日比谷線など)が混雑率ランキングの上位にいる状況が、今後しばらく続きそうだ。