動脈硬化を予防するには
食事の改善が欠かせない

 1945年の終戦前後に生まれた人たちは、戦後の食生活や生活習慣の変化によって、体質が高コレステロールに傾きました。さらに“島国”である日本では、そうした高コレステロール=動脈硬化体質を持った人同士が一緒になるケースも多く、高コレステロール家族=動脈硬化の家系ができやすくなります。

 そうした環境では、1970年代のアメリカで心筋梗塞による死亡が急増したように、高コレステロール体質、つまりは動脈硬化体質の人たちが「自然淘汰」される状況が訪れても不思議はありませんでした。

 しかし、ちょうど同じ時期に日本の研究者・遠藤章博士が発見した「スタチン」という優秀なコレステロール降下薬が登場し、動脈硬化によるさまざまな病気の予防ができるようになりました。そのため、高コレステロール=動脈硬化体質を持つ多くの人が救われることになり、現在に至っています。

 ただ、スタチンの効果には限界があり、高齢者では対応が難しいうえ、高コレステロール=動脈硬化体質が強い人たちに対してはそれだけで抑制できるわけではありません。

 また、スタチンは悪玉のLDLコレステロールを減らしますが、善玉のHDLコレステロールを増やす効果は十分ではなく、中性脂肪抑制効果もないためやはり限界があります。

 さらに、脂質異常症が増え始めた2000年以降は、糖尿病の患者さんも増えてきたため、動脈硬化の予防には血糖の管理も重要になってきました。今回のガイドライン改訂で糖尿病患者のコレステロール管理目標値が厳格化されたのも、その流れを強化した形だといえるでしょう。

 薬だけではどうしても限界があるため、動脈硬化の予防には食事の改善が欠かせません。同ガイドラインでは、動脈硬化のリスクを減らす食事として、次のことがあげられています。

●肉の脂身、動物性脂肪、加工肉、鶏卵の大量摂取を控える
●魚の摂取を増やし、低脂肪乳製品を摂取する
●未精製穀類、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆および大豆製品、ナッツ類の摂取量を増やす
●糖質含有量の少ない果物を適度に摂取し、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える
●アルコールの過剰摂取を控え、「25グラム/1日」以下に抑える
●食塩の摂取は「6グラム/1日」未満を目標にする」

 こうしたことなどが推奨されています。すべてを完璧に実践することは困難ですが、動脈硬化体質をすでに指摘されている方にはひとつの目標となり、意識して心がけることが健康寿命を延ばすと考えられます。