直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、“歴史小説マニア”の視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身やおすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
地名を聞くと
名所旧跡が思い浮かぶ
私は日本各地の地名を聞くと、その土地に関連した名所旧跡が、すぐに思い浮かびます。
「あの町には、あの大名に関係する寺があったはず」「○○の戦いで使われた城があったんじゃないか」「□□派の寺があるよね」
こんな具合にすらすらと情報が出てきます。特別記憶力がいいというより、長年、歴史小説を読み込んできたからではないかと思います。
ある時点を境に
実力が急に伸びる
何事もそうですが、地道に継続していると、飛躍的に実力が伸びるタイミングを迎えます。
たとえば、ギターなどの楽器を習い始めたとき、最初の頃は全然上手くいかないのですが、ある時点を境に急に上達することがあります。
私がダンス・インストラクターをしていたとき、1年間まったく伸びなかった子が、あるときを境に急に伸びる姿を何度となく目にしてきました。
興味と知識が
結びつくようになる
歴史の学びもそれに似ています。知識がないときには、旅先で史跡を見ても興味のアンテナが反応しません。
「あー、そういえば源頼朝っていたよな。あの人に関係している場所なのね」という感じで情報をスルーしてしまいます。
しかし、歴史小説を読んでいると、だんだん変化が生じます。最初は単純に物語を面白がって読んでいただけなのに、それが1年、2年と続くと、興味と知識が結びつ
くようになるのです。
旅先でその場にいる
喜びを感じる
すると、ふと旅行をしたとき、旅先での反応も変わってきます。
「え!? 源頼朝って、ここでこんなことしたんだ!」「これって、いつのタイミングだったんだろう?」といった感じで食いつきがよくなってくるのです。
偉人のお墓を見つけたときにも「なんでここにお墓があるの?」という疑問を持ち、自分でスマホを検索して調べる。
「なるほど、ここで最期を遂げたのか」
史実を知るだけで、その場にいる喜びを感じられるようにもなり、いつしか地名と史跡が結びつくようになるわけです。
情報が連鎖的につながる
今は若い世代の女性にも“御朱印集め”が流行っていると聞きます。とてもよい傾向だと思っています。
せっかく神社やお寺に行くのなら、その神社やお寺の由緒にも興味を向けてはいかがでしょうか。
歴史を知る喜びに気づくと、さらに情報が連鎖的につながり、もっと知識が深まるという好循環のループに入ります。つまり、歴史を知れば旅の楽しさが1.5割増し
くらいになるのです。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。