学習指導要領改訂のたびに
数学6科目がコロコロ入れ変わる

 垂直二等分線以外にも角の二等分線の作図や、与えられた線分を一辺とする正五角形の作図(少し難しい)など、いろいろなものに発展します。一方で、一般角の三等分線の作図は不可能のように、作図ができない図形もたくさんあることに注意します。

 普通の作文が上達すると、(作家を夢見て?)積極的に文章を書くようになるように、作図文が上達すると、証明文を書くことが面白くなる傾向がはっきりあります。それだけに、今の教科書には少し残念な気持ちをもちます。

 なお、堅苦しい作図文ではなく、もっと遊びの要素を取り入れたものとして、「地図の説明(目的地までの道順の説明)」があります。大学の朝の講義の中で、「今日、この教室まで家からどのように来たかについて、図を用いないで、なるべく誤解を生まない説明文を書いてごらん」、と伝えて書いてもらったことが何回かあります。論述文を書く楽しい試みであったと思います。みなさんも学校で友達とぜひやってみてください。誰が読んでも同じように理解できる文章を書くというのは案外難しく、面白いものです。

 また、高校数学教科書のカリキュラムに目を向けると、1990年代の半ばから始まった数学1、数学2、数学3、数学A、数学B、数学Cというアラカルト方式の体系において、建前として数学1、数学2、数学3がコア科目、数学A、数学B、数学Cがオプション科目となっています(それら6科目のうち、3単位の数学1のみ必修)。

 問題点の一つは、これら6科目の中身が約10年に一度の学習指導要領の改訂のたびにクルクルと入れ替わることです。主な状況を参考までに示すと、以下のようになっています。

【2003年度以降】「順列・組合せと確率」が数学1から数学Aに移動、「数列」が数学Aから数学Bに移動、数学2にあった「複素数平面」は廃止、「確率分布」は数学Bから数学Cに移動、等々。

【2012年度以降】数学Aに「整数の性質」が新設、数学Aに(かつて中学数学に主にあった)「作図」と「空間図形」が加わる、数学Aにあった「二項定理」が数学2に移動、数学Cにあった「確率分布」と「統計処理」が数学Bに移動、「複素数平面」が数学3に復活、数学Cは廃止となり、それに伴って「(主に2行2列の)行列」は廃止、等々。

【2022年度以降】数学Cが復活、「複素数平面」が数学3から数学Cに移動、「整数の性質」が数学Aから新科目「数学と人間の活動」に移動、「ベクトル」が数学Bから数学Cに移動、等々。